研究成果

これまでの研究成果や、主なシンポジウム・セミナー等の報告

書籍発行

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出版社HPにて詳細をご覧いただけます。 

(※『鹿児島の100人100の風景』を除く) 

鹿児島環境学Ⅰ

(2009年8月 南方新社) 
研究者をはじめジャーナリスト、行政関係者等多彩な面々が、さまざまな切り口で「鹿児島」という地域・現場から環境問題を提示する。 
*第38回南日本出版文化賞

鹿児島環境キーワード事典

(2009年9月 南方新社)

南北約600キロに広がる鹿児島の独特な自然の景観や希少種の保護への取り組み、水・大気汚染、産業がもたらす環境への影響など、環境に関するキーワード100。

鹿児島環境学Ⅱ
世界自然遺産候補地・奄美

(2010年9月 南方新社)

鹿児島・奄美を拠点とする研究者、国・町などの行政関係者が、それぞれの立場から奄美の環境・植物・外来種・農業・教育・地形・景観についての現状・課題を論じ、遺産登録への道筋を模索するものである。

*第38回南日本出版文化賞

鹿児島環境学Ⅲ
奄美最深部・徳之島

(2011年9月 南方新社)

鹿児島・奄美を拠点とする研究者、国・町などの行政関係者が、徳之島を論じる。さらには近年、にわかに沸き起こった米軍基地移設問題をも伊仙町長のインタビューを交えて考察。世界自然遺産を目指す奄美の最深部・徳之島に挑む。

*第38回南日本出版文化賞

鹿児島環境学特別編
ー地域を照らす交響学ー

(2013年12月 南方新社) 
文学、教育、美術、植物、生態、環境行政、マスコミ、通訳、エネルギー政策、環境保全といった多面的なアプローチで、環境問題をとらえる。「地域発の環境学」という新しい学問のこれからを展望する。

鹿児島の100人 100の風景

(2013年11月 
 南日本新聞開発センター)

〈屋久島世界遺産登録20周年記念〉

鹿児島には未来に伝えるべき素晴らしいものがある!豊かな風景、そして自然とさまざまな生き物たち…。108人の心に残る自然体験をインタビュー。

奄美のノネコ 猫の問いかけ

(2019年3月 南方新社)

世界自然遺産登録を目指す奄美大島での本格的な対策実施までを環境省、鹿児島県、地元市町村及び市民団体が各自の立場から詳述。希少種保護を目的とした国内各地の「ネコ」対策、ニュージーランドなど海外におけるノネコ対策の現状についても紹介。

屋久島・奄美発          世界自然遺産の里と環境文化

(2023年3月 電子書籍)
世界自然遺産を有する屋久島・奄美の共通のキーワードである「環境文化」を比較対照しつつひもとくとともに、それを体験し学べる「里のエコツアー」のみどころやモデルコースなどを紹介。

活動報告

2022年度:モニタリングワークショップ「地域の目が捉える外来植物の侵入」を開催

2023年2月4日(土)、環境省奄美群島国立公園管理事務所との共催により、モニタリングワークショップ「地域の目が捉える外来植物の侵入」を奄美市市民交流センターで開催しました。
対面・オンラインで約30人の参加があり、奄美大島と同じ世界自然遺産地域である沖縄島北部、西表島、徳之島で外来植物対策に関わる3人の講師に講演していただきました。その後、2022年10月23日に開催したモニタリング講習会後約3ヶ月間の調査報告、調査参加者からの体験談、意見交換会を行いました。

調査結果は、環境省の「いきものログ」において団体調査として報告・公開しました。

こちらでは、「外来植物モニタリング調査マニュアル(奄美大島版)の調査対象種を確認したらいつでも報告していただける一般調査を継続実施しています。

2022年度:外来植物モニタリング調査マニュアルを作成し、モニタリング講習会を開催

奄美・沖縄の世界自然遺産登録後の重要な課題となっている、生物多様性モニタリングを住民参加により推進する体制構築の一助とするため、奄美大島で外来植物のモニタリング調査を行う場合の具体的な方法を提案するマニュアルを作成し、発行しました。

2022年10月23日には、このマニュアルを基にした調査に参加していただくための講習会を奄美市役所住用総合支所にて開催しました。
対面で約30人の参加があり、外来植物の現状や外来植物の見分け方等について説明する講習を行いました。その後、現地エクスカーションとして、三太郎峠を散策しながら実際に調査を体験していただきました。最後は講習会場に戻って、データ整理や報告の方法を学習しました。

参加者の皆さんには、この後2ヶ月間程度実施する外来植物モニタリング調査に調査員として参加していただくためのご案内を実施しました。

その調査結果の報告会を兼ねたモニタリングワークショップを今年度中に開催するる予定です。

2021年度:“奄美の自然を守る「自然環境モニタリング」を知ろう!”を開催。

12月12日(日)、”奄美の自然を守る「自然環境モニタリング」を知ろう!”を奄美市役所住用総合支所にて開催しました。
WEBと対面で、33人の参加があり、 環境省奄美群島国立公園管理事務所・阿部愼太郎所長 による野生生物モニタリングの活動についての講演や、NPO法人奄美野鳥の会・鳥飼久裕会長によるオオトラツグミの一斉調査についての講演、鹿児島大学が奄美で取り組むモニタリングプロジェクトの説明などを行いしました。
これまでの”探す・見る・聞く”のモニタリングの現状や、気象観測装置・赤外線カメラ・自動録音装置とICTを利用した新たなモニタリング活動への理解を深めてもらい、今後、奄美地域の方々と共に、①楽しい ②利益の出る ③簡単な 持続的モニタリング活動を行うためには、 どのようなことが必要かを話し合いました。
午後は、 事前に募った希望者の方々と共に、住用町役勝川周辺の森林に設置したモニタリングサイトを散策しました。

2021年12月3日(金) 『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産地域連携ミーティング』に登壇しました。

環境省主催『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産地域連携ミーティング』がオンライン開催されました。
このミーティングは、世界遺産登録を機に地域がつながりを持ち、連携を深め、遺産地域の活性化につなげることを目的 にしており、各地域で活動されている自然、観光、農業等の関係団体、個人の方々約40人が参加し、約50人の視聴がありました。
本研究会からは、奥山正樹特任教授が登壇し鹿児島環境学プロジェクトの取り組みを報告しました。また、各地域の7つの団体からそれぞれの活動報告があり、その後、意見交換が行われました。
 奄美大島からは、あまみ大島観光物産連盟の境田清一郎事務局長がe-bikeを活用した環境文化型ツアーの実証事業について報告し、アマミノクロウサギなどを観察するナイトツアーへの活用を提案しました。
 徳之島からは、タンカン生産農家の松下清志郎さん、米原稔さん、徳之島町役場企画課の米山太平さんが登壇し、アマミノクロウサギによるタンカンの食害とその対策を紹介しながら、クロウサギとの共存について報告。食害問題の解決に向け、クロウサギの生態を学び、柵設置などを体験する有料エコツアーを開催し、好評だったとする一方、サトウキビ被害は増えているということでした。
 沖縄島北部からは 、Endemic Garden H の仲本いつ美さんが、事前学習・集落民泊・外来種防除体験などを組み合わせた環境プログラムを紹介しました。
西表島からは、JTEF西表島支部やまねこパトロールの髙山雄介さんが、イリオモテヤマネコの交通事故防止を目的とした地域協働で行う夜間パトロールと交通調査について報告し、夜間の地元車両が多いことから、島民への普及啓発のため、シンポジウムや子どもたちへの出前授業、冊子配布などを行い、その成果もあり、年々速度は低下傾向にあるということでした。

このほか奄美群島の世界自然遺産推進共同体、沖縄県の世界自然遺産推進共同企業体からの活動報告もあり、 地域間意見交換では、「活動報告が参考になった」「個別の活動を観光客や地元住民にどう伝えていくか」「規制ルールが増えており、そればかりだとネガティブになるので、伝え方が難しい」「これまで研究として取り組んできたモニタリング調査を、持続可能なように地域住民と連携して一緒にできないか」などの意見や悩みが挙がり、関連団体からアドバイスなどがありました。

2020年度:第4回環境文化シンポジウム
「島と東京を結び〈これからの奄美の環境文化〉を語り合う~奄美の自然と深く付き合い、奄美の暮らしを持続させるために~」

鹿児島環境学研究会では、平成29年度「秋名・幾里の環境文化を知る・見つけるシンポジウム」、平成30年度「シンポジウム シマの暮らし(環境文化)を考える」令和元年度「名瀬のむかし、奄美大島のこれから」と、3回の環境文化シンポジウム等の活動を通して、奄美大島の環境文化をテーマに取り組んできました。
2021年2月21日に実施した第4回環境文化シンポジウムでは、高齢者と若者世代を結び、そして、奄美大島と東京をオンラインで結んで、これからの奄美の環境文化、子どもの頃の遊びやシマ(集落)の行事を中心にディスカッションを重ね、「奄美の大切に想う気持ち」は世代や距離を超え、脈々つながっていること、そして、それぞれの世代が奄美のこれからのために考えていることを会場にて対面参加の方々の意見も交えながら確認しました。

シンポジウム趣旨説明
『奄美大島の100人 100の環境文化』インタビューから見えてきたこと
小栗有子 鹿児島大学鹿児島環境学研究会

第1部 奄美の環境文化を考える視点
パネリスト 奥光太郎さん(奄美リゾートばしゃ山村取締役)、静島良樹さん(嘉鉄青壮年団長)、中村由美さん(住用町市婦人会部長)、濱田美和さん(奄美市社交飲食業組合理事)

第2部 島内の世代間をつなぐ
コメンテーター(若者):保岡海輝さん(県立大島高校生徒会長)、要田ののかさん(県立大島高校)、(年配者):西田テル子さん(写真家)、浜手栄男さん((有)浜久代表取締役)、第1部パネリスト

第3部 島と東京をつなぐ
パネリスト 原田尚樹さん(東京奄美会青年部)、井藤守仁さん(一般社団法人結いの島理事長)、第1部パネリスト、第2部コメンテーター

コーディネーター(鹿児島大学鹿児島環境学研究会)
奄美会場:小栗有子(鹿児島大学法文学部准教授)
東京サテライト会場:星野一昭(元鹿児島大学産学・地域共創センター特任教授)、西村明(東京大学人文社会系研究科准教授)

司会(鹿児島大学鹿児島環境学研究会)
奥山正樹(鹿児島大学産学・地域共創センター特任教授)

オンライン配信技術協力
奄美会場:あまみエフエム・ディ!ウエイブ / 東京サテライト会場:西村和海氏

※詳しくは「あまみエフエムYoutubeチャンネル」
第4回環境文化シンポジウム記録集(電子ブック)をご覧ください。

2019年度:大島郡龍郷町と鹿児島大学(産学・地域共創センター、大学院理工学研究科)の共同研究「環境文化型集落集会施設計画に向けた基礎的研究」

産学・地域共創センターと龍郷町との共同研究「環境文化型集落集会施設計画に向けた基礎的研究」(2019年度)を大学院理工学研究科(工学系・建築学プログラム)と共に実施しました。

(共同研究にいたるまでの背景)
2017年3月7日に誕生した奄美群島国立公園には二つの特徴があります。ひとつは、景観が重視されたこれまでの国立公園と違い、景観だけでなく、自然とそこにすむ生き物をあわせた生態系を守る「生態系管理型」であること。もうひとつは、人と自然とのつながりがわかる文化や集落の景観を守る「環境文化型」であることです。

今回、共同研究の舞台となった龍郷町秋名・幾里集落は、自然環境と調和した文化景観(古道、サンゴ石垣、稲作にまつわる風習等)が評価され、集落の一部が国立公園に組み込まれています。しかし、国の重要無形文化財であるアラセツ行事に地域ぐるみで取り組み、伝統行事や集落独自の文化が残る一方で、少子高齢化等の影響でこうした集落の営みをこのまま将来につなぐことが難しくなっています。

鹿児島環境学研究会では以前から秋名・幾里集落で、環境文化に関する共同調査や学習会を集落の方々と進めながら、土地に根ざした文化の価値を見直す活動を行ってきました。
そして、老朽化した秋名集会施設の建て替えにあたり、集会施設を「環境文化の学び舎」と「自然と調和した持続可能な集会場」にしたいという要望が集落の方々から立ち上がり、今回の共同研究に結びつきました。

(共同研究実施の様子)
2019年度は、秋名・幾里集落の環境文化をソフトとハードの両面から継承・発信する「環境文化型」の集会施設の基本構想づくりに取り組みました。
大学側の参加者は、建築分野(ハード)を担当する大学院理工学研究科(工学系)建築学専攻の柴田晃宏准教授と鷹野敦准教授、そして、環境分野(ソフト)を担当する産学・地域共創センター(鹿児島環境学担当)の星野一昭特任教授と法文学部法経社会学科の小栗有子准教授です。また、この共同研究を、建築分野では、同大学院建築学専攻の修士課程の教育課程の一貫として、環境分野では、小栗ゼミの教育活動の一貫として、それぞれの学生の皆さんが参加しました。

建築分野と環境分野の共同で実施した3回にわたる基本構想づくりワークショップでは、秋名・幾里集落の方々から集落の自然環境、歴史、文化などの話を聞き取り、集会所への想いや願いを引き出すことを中心にしました。
集落の小学生から高齢者の方まで多様な世代、多様な立場の方々が参加し、小グループに分かれて、それぞれの想いを語り合いました。学生の皆さんは、話し合いを促すファシリテータ役や記録係として参加し、集落の方々から多くのことを学び取ることができました。

この3回のワークショップを通して、学生の皆さんは集落が育んできた生活の知恵を学び、目に見えない集落の方々の想い受け取ることができました。そして、建築学専攻の学生を中心に、専門的知見を地域に還元することができました。
また、これからの基本設計に向けて、既存の集落施設との連携や、伝統行事や伝統料理、川遊びなど次世代に継承したい環境文化の内容とその方法など、新しい集会施設の姿について、集落全体で一体感をもって取り組んでいく必要性があることを集落の方々と確認しました。

※詳しくは、鹿児島大学環境報告書 第2章 環境報告(11~12ページ)をご覧ください。
鹿児島大学 環境報告書2020pdfファイル (29.3MB)
https://www.kagoshima-u.ac.jp/about/2020kankyouhoukokusyo.pdf

2019年度: 第3回環境文化シンポジウム 「名瀬のむかし、奄美大島のこれから 」

 2019年9月23日(月・祝)に「第3回環境文化シンポジウム 名瀬のむかし、奄美大島のこれから -名瀬から発信する奄美の環境文化を考える」を奄美市AiAiひろばにて開催し、約100名の方に参加していただきました。
  鹿児島環境学研究会の岩田治郎氏の司会の開会宣言のあと、鹿児島大学の馬場国際・研究担当理事による主催者挨拶、共催者である環境省那覇自然環境事務所東岡所長(環境省奄美自然保護官事務所千葉上席自然保護官による代読)、鹿児島県環境林務部自然保護課羽井佐課長による共催者挨拶がありました。

第1部「シマのくらしと名瀬の街」では、小栗有子准教授(法文学部)がコーディネーターとなり、小栗有子准教授から、環境文化について、これまでの鹿児島環境学研究会の取組を含め解説があった後、 当日の午前中に開催された関連プログラム『名瀬の街散策 ニシ・ヒガシ』について、案内人の奄美市立奄美博物館館長 高梨修さん(ニシ担当)、奄美郷土研究会副会長 岩多雅朗さん・丸田泰史さん(ヒガシ担当)から報告していただきました。歴史とともに、名瀬の街の海岸線の形や河川の流れを大きく変わってきたこと、寄留商人のあとを引き継いだシマの人々が街を発展させていったこと、蘭館(らんかん)橋に秘められた悲恋物語など、話の尽きない第1部となりました。

第2部「名瀬のむかしと今を振り返り、名瀬とシマのこれからを考える」では、星野一昭特任教授をコーディネーターに、第1部から引き続いて、案内人の奄美市立奄美博物館館長 高梨修さん、奄美郷土研究会副会長 岩多雅朗さん、名瀬八月踊り保存会事務局長 當光二さん、宇検村出身のサーモンアンドガーリックの新元一文さん、市街地で25年間ダグウッドサンドを営むオーナーの南和仁さんにご登壇いただきました。當光二さんからは、シマ口の唄とシマそれぞれの踊りを伝承していく難しさとその工夫について述べられ、南和仁さんは、スマートフォンやSNSの発達で若者世代の購買行動が大きく変わったこと、新元一文さんからは、宇検村郷友会を例に、壮年・若者世代に継承していくような、多様な「縦」のつながりをつくっていく難しさが語られました。

名瀬の都市部と農村部のつながりについては、会場から、奄美市住用町市地区区長の山下茂一さんより、都市部とのアクセスが向上したことで、医療面等で便利になった反面、人口流出を招いたことが述べられ、奄美市教育委員会の方からは、奄美大島島内の山村留学制度について里親確保の難しさや、子どもの意識の変化により、送迎での留学が好まれている現状について話がありました。最後、星野一昭特任教授が「世界自然遺産登録されるということは、人類の宝として守るべき、遺すべき自然があることを世界に認められ、注目されるということ。世界自然遺産登録を機会に、奄美大島の皆さんがこれからどういうシマにしていきたいかを語っていけるようにしてほしい」と述べられました。

シンポジウムの最後は、小栗有子准教授が、「奄美をはじめ、日本全国が人口減少で岐路に立っている。昔は海も山も人も、今より近かったのだろう。人と自然の関係が切れることで、人との関わりも希薄になっているのではないか」「踊りや行事の伝承を形ではなく、伝承していく意味を考え、伝承する楽しみへと工夫してほしい」という言葉があり、今回のシンポジウムでは、学内のポスターをきっかけに参加された地元の高校生の皆さん、奄美大島で研究活動をされている島外の大学生の皆さんが参加されていたことから、2年前の環境文化シンポジウムでの高梨修さんの発表を例に、「年配者の方々が大切にしてきたことを、若い世代の暮らしや楽しみとして、どう紡ぎ直していくのか問われていくと思う。皆さんが持っている思いや経験、つながりはジグソーパズルのピースのひとつひとつ。そのピースを持ち寄ってひとつの絵にすることが環境文化。縁あって集った皆さんがここを始まりとして、これからの奄美をいっしょにつくっていってほしい」と語りかけ、締めくくられました。

※詳しくは、電子ブック:第3回環境文化シンポジウム記録集をご覧ください。

2018年度:シンポジウム シマ(環境文化)を考える 

2019年1月12日(土)に「シンポジウム  シマのくらし(環境文化)を考える」を大和村防災センターにて開催し、約60名の方に参加していただきました。

鹿児島環境学研究会の岩田治郎氏の司会の開会宣言のあと、鹿児島大学の高松研究担当理事による主催者挨拶、共催者である環境省那覇自然環境事務所東岡所長(環境省奄美自然保護官事務所千葉上席自然保護官による代読)、鹿児島県環境林務部自然保護課羽井佐課長による共催者挨拶がありました。

第1部「シマの環境文化を知る・共有する」では、小栗有子准教授(法文学部)がコーディネーターとなり、龍郷町地域おこし協力隊村上裕希さん、秋名アラセツ行事保存会長窪田圭喜さん、住用町市集落区長山下茂ーさん、大和村国直集落区長村上惠子さん、NPO法人TAMASU代表中村修さんに、パネリストとして登壇いただきました。

龍郷町秋名・幾里集落、住用町市集落、大和村国直集落それぞれの散策の様子を紹介するとともに、ほかの集落の方から見えた共通点や相違点についてそれぞれに意見が出されました。そして、昨年度に開催した「秋名・幾里の環境文化を知る・見つけるシンポジウム」で採択された宣言を龍郷町秋名集落区長隈元巳子さんに読み上げていただき、集落が大切にしている環境文化は、それぞれの集落の風景の中にも残されていることを確認しました。

 第2部「シマの伝統行事のこれから」では、第1部に引き続き、小栗有子准教授をコーディネーターに、伝統行事を受け継ぐ先輩世代として、住用町見里集落の川畑安秀さん、秋名アラセツ行事保存会長窪田圭喜さん、国直集落老人クラブ会長晨原重光さん。後輩の若者世代として、住用町見里集落の師玉当太さん、龍郷町秋名集落の重田美咲さん、大和村青壮年団長の村上京助さん、また、都市部と集落を結ぶあまみエフエム・ディ!の麓憲吾さんにご登壇いただきました。

伝統行事の過去、現在、未来について先輩世代と後輩世代と話し合う中で、伝統行事は他の集落イベントと違い、神ヘ感謝の念が大事にされていることや、活動を通してユイの心や使命感が育まれていることが確認されました。先輩世代からは、これまでの継承の仕方を大切にしてこれからも伝統行事を続けてほしいことが語られ、後輩世代からは、子どもの頃からの伝統行事ヘの憧れや、生活環境の変化とともに伝統行事のあり方を見直しながら、継承していきたいという思いが語られました。

第3部「移住者×地元で「シマの価値」再発見」では、星野一昭特任教授(産学・地域共創センター)がコーディネーターとなり、Iターンの移住者側として、大和村国直集落の竹下宏太郎さん、住用町和瀬集落の原木洋子さん・原木恵一さん夫妻、龍郷町秋名集落の藤井菊美さん。受入側として、龍郷町秋名集落区長隈元巳子さん、NPO法人すみようヤムラランド理事長満田英和さん、NPO 法人TAMASU代表中村修さんにご登壇いただきました。

藤井さんは、移住体験をきっかけに魅了された、田んぼで育つマコモダケと秋名・幾里集落の人たちの人柄について、東日本大震災をきっかけに住用町和瀬集落に移住してきた原木さん夫妻は、全員参加を心がけている集落活動や伝統行事の魅力を、国直集落でカフェを経営する竹下さんは、不便を楽しむ面白さがあることを伝えてくれました。受入側からは、集落活動を支える「活動人口」と「集落組織」のあり方をテーマに、集落行事への使命感やシマの「結いの精神」 や、負担にならないような集落活動の事例紹介、また、活動に参加してもらう難しさ等をお話してしていただきました。

 シンポジウムの最後は、小栗有子准教授が「シマには、ひとの営みと自然が生み出す環境文化を味わえる価値がある」こと、それを持続するためには、今後も集落聞との対話、世代聞での対話、内と外の対話の大切であり、今後もそうした対話が続いていくことへの期待を話され、司会の岩田治郎氏が、5年前に鹿児島市で開催された奄美復帰60年シンポジウムでの元ちとせさんの言葉(「言葉とリズムと音が、お話のようにメロディーに乗って、昔の人の物語や風景が目に浮かんでくるのが島唄の魅力だと思う。遠い遠い記憶にたどり着く気がする。見たことがないものでも、見たような気がするのは、それは命が巡り、受け継がれいるということだと思う」)を紹介し、この言葉が環境文化の根底にはあるのではないかというお話で締めくくられました。

※詳しくは、 電子ブック: 2018年度【シンポジウム シマのくらし(環境文化)を考える】記録集をご覧ください。

2017年度:秋名・幾⾥の環境⽂化を知る・⾒つけるシンポジウム

2018年1⽉28⽇に、⼤島郡龍郷町幾⾥の秋名コミュニティセンターで「秋名・幾⾥の環境⽂化を知る・⾒つけるシンポジウム」を⿅児島⼤学⿅児島環境学研究会が、環境省那覇⾃然環境事務所、⿅児島県と共催により開催しました。龍郷町や奄美市から約90⼈が参加し、事例発表や集落散策などを通して秋名・幾⾥の環境⽂化について考えました。

冒頭の挨拶では、環境省奄美⾃然保護官事務所の千葉康⼈上席⾃然保護官が環境⽂化型国⽴公園について解説され、第1部:「環境⽂化を知る」では、 (公財)屋久島環境⽂化財団北原和博事務局⻑やNPO法⼈すみようヤムラランドの和⽥美智⼦さん、⿅児島県⽴⼤島北⾼等学校聞き書きサークル、奄美市⽴奄美博物館の⾼梨修学芸員から事例発表がありました。

第2部︓「⾜元の環境⽂化をさがす」では、秋名・幾⾥からアラセツ⾏事保存会の窪⽥圭喜会⻑、秋名集落の隈元⺒⼦区⻑、⽣活研究グループ「まーじんま」の⼭⽥眞砂⼦さん、秋幾農業創成塾メンバーの國⼭教⼦さんから、集落での活動紹介があり、共通教育センターの桑原季雄教授が外からの視点で考えた環境⽂化について発⾔しました。

第3部︓「環境⽂化を調べる」では、⼭や川と暮らしの関りを調べる【⼭・川コース】と、海と暮らしの関りをめぐる【海コース】に分かれ、昔の暮らしの工夫の跡や、祭事の様子について説明を受けながら、秋名幾⾥集落の環境⽂化を体験しました。

シンポジウムは、「秋名・幾⾥の環境⽂化を知る・⾒つけるシンポジウム宣⾔」を参加者全員が承認して終わりました。この宣⾔は「まーじん ゆらてぃ むかしぬ むんずくりば ゆるくでぃ のこそやー︕(みんなで集まって 昔のものづくりを 楽しんで残していこう︕)」という集落の皆さんの想いを実現するためのもので、今回登壇された秋名・幾⾥集落の皆さん、龍郷町地域おこし協⼒隊の村上裕希さん、桑原季雄教授、星野⼀昭特任教授、⼩栗有⼦准教授が事前に話し合いながら案を作成しました。隈元⺒⼦区⻑が宣⾔を読み上げたのち、参加者を代表して奄美市から参加された あまみエフエム・ディ︕ウェイヴの麓憲吾さんとサーモン&ガーリックの新元⼀⽂さんが集落活動の⽀援とそれぞれの地域の環境⽂化の確認を約束する宣⾔後段を読み上げ、参加者全員がそれに賛同して宣⾔が承認されました。

※詳しくは、電子ブック:2017年度【秋名・幾里の環境文化を知る・見つけるシンポジウム】記録集をご覧ください。

2017年度:国連大学学長・国連事務次長デイビッド・マローン博士 鹿児島大学来訪記念講演会

2017年6月2日、東京青山に所在する国連大学のDavid Malone(デイビッド・マローン)学長が前田芳實学長を表敬訪問しました。

初めて鹿児島を訪れたマローン学長は、市の中心地に緑豊かな大きなキャンパスを有する鹿児島大学の魅力に触れ、安全な国で環境問題など地球規模の問題に熱心に取り組んでいる日本は東南アジアの学生にとってあこがれの国となっており、東アジアや東南アジアだけでなく、インドも含め、多くの留学生に鹿児島大学で学んでほしいとの希望を述べました。

 懇談には、高松英夫理事、鈴木英治グローバルセンター長、星野一昭かごしまCOCセンター特任教授も同席し、鹿児島大学の留学生事情や各種取組が紹介され、有意義な意見交換が行われました。

  マローン学長は懇談の後、法文3号館の講義室で留学生を含む学内外の70名を前に、国連が2015年に定めた2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の可能性とリスクについて講演を行いました。 

講演では、国連設立以降の開発問題の歴史を説明した後、17項目169に及ぶ膨大な到達目標を世界全体で実現するためには各国がそれぞれの国内事情を踏まえて優先順位をつけながらに実現のために努力すること、開発途上国の貧困削減のためには特に教育と保健が重要であることが強調されました。講演後に4名の学生から質問が出されたほか、講演会に参加された聴覚障害者の方と手話通訳を交えて意見交換も行われ、講演会は盛況のうちに終わりました。

2016年度:小野寺浩氏他共著『国立公園論 -国立公園の80年を問う-』南方新社より刊行

2017年3⽉28⽇に、南方新社より『国立公園 -国立公園の80年を問う-』が刊行されました。鹿児島環境学プロジェクトのメンバーである小野寺浩氏が世界自然遺産である屋久島、そして、2017年3月7日に34番目の国立公園となった「奄美国立公園」について書いています。
詳しくは、出版社HPをご覧下さい。http://www.nanpou.com/?pid=115744140

2016年度:シンポジウム 屋久島から学ぶ、本音で語る奄美の世界自然遺産

2017年3⽉2⽇に、奄美市名瀬の奄美観光ホテルで、シンポジウム「屋久島から学ぶ、本音で語る奄美の世界自然遺産」を開催し、約100⼈が参加しました。講師の田中準・環境省屋久島自然保護官事務所首席自然保護官は、2008年から約5年間、奄美自然保護官を務め、屋久島、奄美双方を知る立場から、「屋久島の苦闘する姿から学ぶべき。世界遺産は珍しいものではなく、努力なしに人が来ることはない」と強調し、「先手先手の対応が大事。奄美と屋久島は異なる魅力を持っている。沖縄も含め協力し、全体に遺産登録の効果を波及させることが求められる」ということを語りました。第2部では、出席者から寄せられた質問に応えるなどの意見交換を行いました。

※詳しくは、電子ブック:2016年度【屋久島から学ぶ、本音で語る奄美の世界自然遺産】記録集 をご覧ください。

2016年度:ネコで決まる!?奄美の世界自然遺産!かごしま国際ノネコ・シンポジウム

2016年10月30日、かごしま県民交流センターにて、鹿児島大学鹿児島環境学研究会主催による「ネコで決まる!?奄美の世界自然遺産!かごしま国際ノネコ・シンポジウム」を開催し、鹿児島市内外、奄美大島、徳之島から、約100名の参加がありました。

世界自然遺産登録を目指している奄美地域で課題となっているノネコ問題については、昨年奄美大島でシンポジウムを開催しました。奄美地域では多くの住民がこの問題への対応の重要性を認識していますが、一方で、多くの鹿児島市民や鹿児島県民にとってはほとんど認識されていない問題です。

奄美大島と徳之島でノネコ対策を行政が円滑に進め、世界遺産登録を確実なものとするためには、捕獲したノネコを可能な範囲で馴化し、譲渡する取組も必要です。このため、馴化されたノネコを受け入れる飼い主の確保が不可欠になります。もちろん、捕獲したノネコをすべて譲渡することは現実的ではありませんが、こうした取組を両島島民だけではなく、広く鹿児島県民、特に鹿児島市民の理解と協力を得て進めることが重要です。このような背景から、鹿児島市民及び県民にノネコ問題への興味関心を持ってもらうとともに、動物愛護関係者にノネコ問題についての認識を高めてもらうことを目的に本シンポジウムを鹿児島市内にて開催しました。

前田芳實鹿児島大学長による主催者挨拶、西村学環境省那覇自然環境事務所長(中野次長代読)、松本俊一鹿児島県環境林務部次長兼奄美世界自然遺産総括監による共催者挨拶の後、「世界自然遺産登録に向けた現状と外来種対策」と題して、環境省徳之島自然保護官事務所の渡邊春隆自然保護官による基調講演が行われました。 引き続き、ニュージーランド保全管理研究所のアル・グレン博士による島嶼地域での侵略的外来種の対策についての事例発表、小栗有子准教授による「ノネコ問題の深さと広がり」をテーマにした基調講演がありました。休憩をはさんで、坂本紘公益社団法人鹿児島県獣医師会長、久野優子一般社団法人奄美猫部代表、美延治郷NPO法人徳之島虹の会理事、伊藤圭子ゆいの島どうぶつ病院長をパネリストとして、「奄美とかごしまのつながりを語る」をテーマにパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、ノネコ問題は奄美地域だけの問題ではなく県民全体で考えるべきであり、ノネコ問題の事実をみんなで共有して現実的な判断をし、みんながその判断に責任を持つこと、苦渋の決断をした奄美大島・徳之島地域の判断をオール鹿児島で尊重し支えることの重要性を共有することができました。

※詳しくは、電子ブック:2016年度 【ネコで決まる!?奄美の世界自然遺産!かごしま国際ノネコ・シンポジウム】記録集 をご覧ください。

2015年度:奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム

2015年12月6日(日)に奄美大島・奄美市において「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」を開催しました。参加者は約150名。当日は、開演前から龍郷町立大勝小学校5年生が、自分たちで作成した「絵本」を元気な声で来場者に手渡してくれました。

 シンポジウムは、本学の前田学長からの主催者あいさつにはじまり、環境省那覇自然環境事務所長、鹿児島県奄美世界自然遺産総括監、奄美群島広域事務組合管理者など、本シンポジウムの共催者、協力者からのメッセージがつづきました。

 最初に登壇したのは、大和村にある環境省奄美野生生物保護センターの鈴木上席自然保護官。「世界自然遺産登録に向けた現状と外来種対策」と題して、1万頭を超えていたマングースが100頭以下に減った一方で、山中で野生化したネコ(ノネコ)が希少野生動物にとって脅威となっていることが紹介され、対策の現状と課題が報告されました。

 続いてニュージーランド保全管理研究所のグレン博士から島嶼地域での外来種対策の紹介がありました。最初のネコ駆除が90年前に行われたこと、ネコ駆除が行われた最大の島の面積は約300㎢であること、人口が最大の島でも1000人程度であり、面積約700㎢で人口が6万人を超える奄美大島の挑戦は世界的に前例がない取組であることがわかりました。

 その後、本学から二つの調査研究を報告しました。国際島嶼教育研究センター奄美分室の鈴木真理子プロジェクト研究員は、国立環境研究所・北海道大学と共同で行ったネコに関する住民意識調査の結果を報告し、多くの人が特にノネコについては何らかの管理をすべきであり、飼い猫の山への放棄が問題の根源であると認識していることがわかりました。

 鹿児島環境学研究会の小栗有子准教授は、絵本に登場するネコの絵を使いながら、ノネコの問題はどの立場に立つか(ネコ好きか、ネコ嫌いか)、どういう視点から考えるか(人間側、ネコ側、野生動物側)によって問題の見え方が変わるため、考える物差しを合わせることが重要と指摘し、今後多様な関係者が協力し合える作業を通じて合意形成を図ることが必要と強調しました。

 後半は、奄美大島に住む5人のパネリストが登壇して「奄美の明日を語る」パネルディスカッションが行われました。コーディネーター役は鹿児島環境学研究会の星野一昭特任教授。

 9年前にカフェを開店した久野優子さんは、野良猫の多さやネコにとっての悲惨な状況を目の当たりにして、野良猫の避妊去勢やネコの適正飼育の普及啓発などの取組を開始し、昨年夏に活動団体「奄美猫部」を設立した経緯に触れながら、官民が同じ方向を向いて協働作業でネコの様々な問題に取り組む必要性を強調しました。

 科学的な根拠に基づいて奄美の希少な野生動物の保護を訴えてきた奄美哺乳類研究会の阿部優子さんは、山裾の集落では飼い猫や野良猫がノネコと同じように希少動物を捕食している可能性を指摘し、ノネコ問題解決には時間的余裕がないことを踏まえた早急な対策が必要であると行政関係者に強く訴えました。

 しーまブログの運営を通じて島の情報発信に努めている深田小次郎さんは、ノネコ問題の重要性を認識して、この問題の発信に取り組みたいと思い、関心のない人にいかに興味を持ってもらうか、双方のやり取りによって人を巻き込む大切さといった観点から、集落のネコの写真を撮って名前を付けてみんなで管理するための「ネコアプリ」を提案しました。

 大島高校1年生の久保駿太郎君は、奄美大島の野生動植物を調査している生物クラブの活動でノネコ問題を調べ、現状を変えなくてはいけないと強く感じたことを報告。ネコを悪者扱いするのではなく、ペットとして共生できるようにみんなで考える環境づくりをしていきたいと述べました。また、世界自然遺産登録に関しては、登録の前に観光客増加など予想される事態への対策をとっておくべきと大人たちに苦言を呈しました。

 20年以上前に奄美大島に移住した愛猫家でもあるピアニスト/作曲家の村松健さんは、移住当時にネコが似合う島との印象を受けたことに触れ、ノネコ問題はネコを愛している人がネコとどう付き合うかが問われている問題であるとして、ネコ好きの愛情を良い方向に向けることが重要であると述べました。また、奄美の未来を考える際に「島特有(固有)の」で終わらせずに、何がどのように特有(固有)で貴重なのかについて理解を深めることの重要性を指摘しました。

 コーディネーターは、パネリストの議論を受けて、地域がノネコ問題、野良猫問題そして飼い猫について考える仕組みを作ることの重要性を強調し、例えば、地域ぐるみで集落のネコを調べ、見守る取組を行うこと、今後開発されることを期待して「ネコアプリ」を活用すること、ネコ好きの方の協力が得られる方策をみんなで考えていく必要性を指摘しました。鹿児島環境学研究会としてもこうした取組を一緒に考えていきたいと述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。

 最後に、グレン博士、環境省、鹿児島県から一言ずつ発言があり、予定の3時間を30分ほど超過してシンポジウムが終了しました。

※詳しくは、電子ブック 2015年度 【奄美の明日を考える 奄美国際ノネコ・シンポジウム】記録集をご覧ください。

2015年度:小野寺さんが日本造園学会田村剛祥を受賞

2015年5月23日、東大で開催された日本造園学会で、鹿児島環境学ワーキンググループメンバーの小野寺浩さんが、造園学会田村剛賞を受賞しました。受賞は、鹿児島環境学の研究や本出版などの活動が大きく評価されたものです。

田村賞は、日本の国立公園や自然保護政策の基礎をつくった田村剛氏の功績を記念して設けられた賞です。

 小野寺さんの選考理由は、以下です。

「小野寺氏は人間と自然の共存のあり方を追求し、『共生と循環』の視点から屋久島環境文化村構想(鹿児島県策定)を立ち上げ、文化人や政治家を動員してわが国最初の世界遺産である屋久島の登録に多大な貢献をした。 (中略)

屋久島や奄美群島の国立公園指定や世界遺産登録に向けた取り組みでは、離島の人々の日常や社会意識が独特の自然や文化と密接に結びついていることを示し、島や集落ごとの環境文化の個性を活かした地域環境学を提言した。これらの成果の一部は編著である『鹿児島環境学Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、特別編』として出版された。氏の思想と業績は自然環境保全計画のあり方を示し、その発展に大きく寄与するものであり、日本造園学会田村剛賞にふさわしいと判断される」

2014年度:定例研究会第1回~第6回

2014年度の定例研究会では、ワーキンググループメンバーやゲストから奄美群島をテーマにした話題提供をしてもらい、その内容を普及啓発冊子『きばりゅっ島!ー今を生きるー』にまとめました。

※電子ブック『きばりゅっ島!ー今を生きるー』にてご覧いただけます。

2014年度:定例研究会第1回~第6回

第1回 2014.5.26
西村明氏(宗教学)
小林善仁(歴史地理学)

鹿児島環境学研究会は、2013年12月に『鹿児島環境学特別編‐地域を照らす交響学』(南方新社)を刊行しました。本書は、過去に刊行した3巻シリーズ『鹿児島環境学』を総括する目的でまとめたものです。本年度は、そこで明らかにした「学問的深化の模索(Aコース)」と「現場の接近の努力(Bコース)」について、奄美群島を共通のフィル―ドにして引き続き探究します。

第一弾の取り組みとして定例研究会を5回ほど開催する予定です。早速5月に研究会を開催いたしました。第1回目は、研究会メンバーの西村明氏(宗教学)、小林善仁氏(歴史地理学)から話題提供をしてもらいました。以下、報告の一部を紹介します。

はじめに、小林氏より、「地図と奄美」と題して話題提供が行われました。国土地理院の地形図図歴(地形図作成の履歴)の見方・利用方法や、国土地理院の所蔵していない旧版地形図が国会図書館に所蔵されていることについて説明がありました。また、鹿児島県本土以南の島々を指す「南西諸島」と「琉球弧」という二つの地域名称についても説明があり、「南西諸島」は軍事的・政治的名称、「琉球弧」は学術的名称として使用されていました。「南西諸島」の名称が登場した明治20年代は、国内の地域呼称が変わりつつある時期(旧国から道府県など)でもあります。最後に「南西諸島」があるなら、北東・北西・南東諸島があってもいいのではと調べたところ、明治25(1893)年発行の『日本水路誌1』に「北東諸島」(現、千島列島)の記載のあることが分かったとのことでした。

地形図の作成時期や、地域の呼び方から、その当時の日本における地域の位置づけが分かるそうです。現在は、地図の平和利用が進んでいるため地図から軍事を想像しづらいですが、今なお地図の国外持ち出し禁止の国もあるように軍事と切り離せない、基本的には地図作成は政治とは切り離せないものであるとのことでした。

次に、西村氏より、「西村、奄美で宗教調査やるってよ!ーポスト九学会の宗教学的奄美研究に向けてー」と題して話題提供が行われました。このたび、九学会連合による2度の調査と、スピリチュアリティ研究の個人調査を踏まえつつ、奄美群島域をフィールドとした宗教研究の可能性を探究することを目的として研究を行うことになったそうです。2013年は奄美の日本復帰60周年の年であり、復帰直後に行われた50年代の九学会調査から2世代後の動向を捉えることができる好機です。

奄美は、群島内から外部への移住に加え、近年では群島内への移住者もあり、活発な人口移動が見られます。しかし、以前からエコロジーやスピリチュアリティの思想的背景を持って奄美を生活の拠点として選択し、その環境に沿ったライフスタイルを築こうとしている人々の持つ宗教性については、十分な研究が行われてきませんでした。今回の研究では九学会の調査項目を見直し、自然、環境といった項目も追加しますが、半構造化インタビューという感じで、その人の語りたいことやその場の流れで項目にないことも追加で聞いたりするというのが、調査のやり方だそうです。

その後様々な質疑応答が交わされました。

第2回 2014.6.30
麓憲吾氏(NPO法人ディ!)
髙﨑恵氏(オフィースピュア)

今回は、「青年・壮年からみる奄美の今とこれから!」をテーマに、NPO法人ディ!代表の麓憲吾氏、オフィース・ピュアの髙﨑恵氏のお二人をお招きしました。

はじめに、麓氏より、「チームFUMOTOのこれまでの歩みとこれから」と題して話題提供が行われました。麓氏は23歳の時にUターンし、島にあれがない、これがないではなく、自分たちで楽しむ場を作ろうとライブハウス「アシビ」をオープンされました。その後、島外の人にシマ唄の価値を教えられるという苦い体験を通して、生活の中に生きる文化である奄美のシマ唄に取り組むことを始めます。そこでまず、面白くやっていく取りかかりとしてシマ唄漫談バンド「サーモン&ガーリック」を仲間と結成し、シマ唄のことを島の人に島のことを伝えたいという思いから、イベント「夜ネヤ、島ンチュ、リスペクチュ!(今宵は島の人に敬意を!)」を企画されています。島をつなぐ秘訣が青年団なのではないかと考え、その活動や存在意義を世の中に伝えるために、イベント開催にあたり青年団にも協力をもらっています。

また、島の価値を島の人が知る手段として、2007年5月に「あまみエフエム ディ!ウェイヴ」を開局し、島口を使って島の情報に特化した番組を放送されています。2010年10月の奄美豪雨災害では、情報だけでなく安心・安堵を伝えたいという思いから24時間体制で放送を続けられました。MBC賞(※)を受賞されたこの出来事は、島のメディアのあり方や情報共有ということの意味、自分達の役目役割を考えさせられる機会だったそうです。

他にも、島に残ってメジャーデビューを果たしたカサリンチュや、選抜に出場した大島高校野球部の話題にも触れながら、今後の課題として、地域に生きるというアイデンティティの形成や次世代へのつなぎ方をあげられました。

引き続き、髙﨑氏より、島のシングルマザーのことや「子どもを生むことが島のためなんだ」と言われることの苦痛から島を離れた女性の紹介があり、性差にかかわらず一人の人として多様性や違いを尊重し合うことが、もっと価値あるものが生み出されるために必要であることや、いろいろな所の地域づくりや地域おこしが行事消化型になっているため、課題解決型に変えていかなければならない、確かな問いを立てる力を地域が持って欲しい、等のコメントをいただきました。

その後、活発な意見交換が行われました。

※MBC賞とは、株式会社南日本放送が、産業・経済・文化・教育・芸術・スポーツ等、各分野で現在活躍し、かつ、将来を期待される団体などへ顕彰される賞です。

第3回 2014.8.5
徳田謙治氏(宝勢丸鰹漁業生産組合 ) 
木村忠義氏(奄美柑橘クラブ)

今回は、「奄美の第一次産業・海と山からみる奄美の今とこれから」をテーマに、宝勢丸鰹漁業生産組合の徳田謙治氏、奄美柑橘クラブの木村忠義氏をお迎えしました。
はじめに、徳田氏より「宝勢丸鰹漁業生産組合のこれまでとこれから」と題して、宝勢丸の取り組みについて話題提供が行われました。
 宝勢丸は大正11年に名瀬大熊町に発足し、古くから自営船での漁獲・加工・直販を一貫して行う経営スタイルに取り組んできました。しかし、近年燃油高騰や漁価低迷など経営環境の悪化が著しく、赤字経営が常態化した時期を経験し、高コストの自営船を小型船化するなどコストを大幅に圧縮し、経営の黒字化に成功した経緯について説明をいただきました。奄美大島の鰹一本釣りの経営の問題点としては、時化になると店が休みになることや奄美産鰹の認知度の低さがあります。このことに対して現在は、畜養による商品の提供、観光客や修学旅行生を生産現場に受け入れての鰹一本釣りの丸ごと体験の実施(漁港内のいけすでの漁獲、削り節加工、さばきなど)、鰹の腹皮の燻製品の改良など土産物の開発、県外百貨店での初鰹刺身の販売などの取り組みをはじめておられます。今後の課題としては、釣り体験用のいけすの増設や遊漁船の大型化、さらに接遇・衛生面の改善等があります。また、奄美の世界自然遺産登録で奄美の知名度が向上し観光客が増えることが期待されますが、奄美でブルーツーリズムを合い言葉に、全国の方が来て、見て、触れて、食べていただけるよう頑張っていきたいとのことでした。
徳田氏の話題提供に対し、水産学部の佐野雅昭教授より、徳田氏は加工や小売業まで行い、さらにちがう価値を付加することで収入機会を増やすことに成功している。その理由は、徳田氏が一度外の社会を見てUターンして様々な発想や感覚でもって新しい取り組みができた結果ではないか。奄美のような離島で流通条件が悪い中、地域の環境文化に依拠した形での事業形態は持続的にやっていく上で大事な部分で、徳田氏の事例がブルーツーリズムのいいモデルになってもらいたい。漁業と観光がどのような関係をもって奄美の環境を利用していくのかということを、もっと大きなビジョンで奄美全体の振興を考えていく必要があるのではないか、等のコメントが寄せられました。
次に、木村氏より「奄美柑橘クラブのこれまでとこれから」と題して、柑橘クラブの活動内容について話題提供が行われました。
柑橘クラブは、奄美大島で柑橘(主にたんかん)を作っている計8名の若手専業農家のグループで、たんかん生産で現在課題になっている栽培技術の改善などについて行政などと一緒に取り組まれています。報告では、たんかんの後期重点摘果技術(どの時期に、どの程度摘果すれば、高品質の果実がどれぐらい収穫できて、翌年もたくさんならすための栽培技術)の確立や、柑橘栽培に必要な台木をどうすればいいかという試験、今年から農協からの委託で行っているサポートシステム(各生産農家に対して果樹園に必要なことや技術的に何をしたらいいかという指導を行う)等について説明をいただきました。また、農業は営業力が弱いため、柑橘クラブは農協や行政と一体になって販売戦略を考えマーケティングについても試行錯誤しており、活動の結果、県外の市場やスーパーにおいてたんかんの美味しさは高評価を得るようになったそうです。しかし、まだまだ認知度が低いので、継続して取り組みたいとのことでした。その他、たんかんだけでなく奄美大島の農業の課題として、農地の貸借などの交渉が進まず土地の有効活用が困難であることや、技術的・知識的な面の不足から利益率が低いことなどがあげられました。
木村氏の話題提供に対し、農学部の冨永茂人教授より、たんかんは貯蔵性や輸送性が高いため屋久島や本土などと競合するが、それよりも大きな課題として奄美のたんかんは、10アールあたりの収量が県内で一番低いことが指摘されました。経営を成り立たせるのは、単価×収量ですが、技術力、立地条件の差や高齢化もあって、農家間でも収量に差があること、奄美大島は秋季が温暖であることから果実が大きくなりすぎ、糖や酸が低く大味になりがちで果実品質による価格差があること、したがって、奄美たんかんの品質向上を図ること重要であることなどが指摘されました。また、農家の技術が平準化していないこと、選果場の稼働率が低いことなども問題点としてあげられました。他にも、日本は果物が余っている状態なので、生果販売から一次加工・二次加工をして供給期間や販路を拡大したり、ネット販売の必要性、土地所有意識が強いため、土地の流動化や有効活用の促進に行政のサポートをどのように生かしていくか等の課題も紹介されました。
この後、参加者の意見交換も活発に行われました

第4回 2014.10.23
鳥飼久裕氏(奄美野鳥の会 ) 
新元一文氏(奄美市役所紬観光課)

今回は、共通のテーマである「地元の専門家からみる〈奄美の環境と産業〉のこれまでとこれから」について、二名のゲストをお招きしました。
お一人は、奄美野鳥の会会長の鳥飼久裕さん、二人目が、奄美市役所紬観光課職員の新元一文さんです。
最初に、鳥飼久裕氏より「奄美に生きる自然保護団体のあゆみー課題と挑戦」と題して、奄美野鳥の会の探鳥会や自然観察会を通した啓蒙・普及活動、オオトラツグミのさえずり調査などの調査・研究活動、奄美の希少生物の保全・保護活動について話題提供が行われました。また、奄美野鳥の会がNPO法人化するまでの経緯や、自然保護の事例としてアマミノクロウサギ訴訟、マングース対策、森林伐採の反対運動などが紹介されました。そのほか、希少種を守るだけでなく生態系そのものを守らなければいけない、中核地域と緩衝地域をどのようにゾーン分けして運用していくのか、エコガイドの自主的な運用ルールの作成、自然だけでなく文化も含めて奄美の素晴らしさを伝える必要性などが、現時点の課題として指摘されました。
次に、新元一文氏より「奄美に生きる行政マンのあゆみー課題と挑戦」と題して、話題提供が行われました。はじめに、島の人達が島の自然・地域・歴史をよく理解できていないことが自立・内発的な動きにつながっていない、これがないと何も始まらないのではないかという問題提起があり、結論として「環境文化の考え方を奄美の人が理解し、そして自ら働く」ことを示されました。次に、その結論にいたった理由として、仕事を通して見た観光産業を取り巻く環境変化や、「サーモン&ガーリック」というプライベート活動を通して見た島の人たちのシマ文化やシマ唄に対する価値観の変化など、「現代社会における価値観の変化」について話をいただきました。また、課題としては、「中央志向・依存 幸せの価値観の多様性」について指摘があり、「シマ博覧会」や「すみようヤムラランド」の活動を紹介されました。最後に「構築できない組織の現状」として複雑な観光関係組織や縦割り行政の問題を指摘されました。 

第5回 2014.12.4
山中順子氏(徒根屋(株)日本伝承プロジェクト)
藤田竜志氏(NPO法人瀬戸内町観光物産協会)

今回は、「奄美の魅力とそれをプロデュースすること~これまでとこれから」をテーマに、徒根屋(株)日本伝承プロジェクト代表の山中順子氏、NPO法人瀬戸内町観光物産協会理事長の藤田竜志氏のお二人をお招きしました。
はじめに、山中氏より「奄美に通うことーこれまでとこれから」と題して話題提供が行われました。山中氏は、14年前に奄美と出会って以来、島々の最高齢の方々に会い、島はどういう所か、言葉や風習、伝統文化や死生観、それらの島々の生き方など何が豊かさにつながるのか、人が祈るというのはどういうことかなどについて取材を続けられています。
ライフワークとして奄美に通いはじめ、2009年より「奄美手帳」を作成することになった経緯や現状、奄美市の事業で全国向けのフリーペーパーを作成中であること、全国の郷友会・出身者をつなぐためSNSなどを使った情報発信、オール奄美産をテーマに、奄美産絹糸で織った帯の製作・販売、裂き織りによる紬の再生・手仕事の復活など、多岐にわたる活動についてお話をいただきました。その中で、100歳の方の生き様が世界遺産=奄美遺産ではないか、世界中の人につながるキーワードが奄美にあるのではないか、人と人とをつなぎ合わせることが今まさに奄美で求められているメニューではないか、といったことがあげられました。
次に、藤田氏より「奄美に生きることーこれまでとこれから」と題して、特別に意識することなく当たり前に行われる集落行事、島民が抱いている変化することへの不安や恐怖心、島外から受ける観光への影響や行政のあり方など、島の現状についてお話をいただきました。若者達が会合へ参加することや外での仕事を経験することが、島のことに興味をもち真剣に考え始めるきっかけになるのではないか、年令差に関係なく人として真剣に向き合い、見守り、受け入れることが将来につなぐために必要ではないか、といったことがあげられました。また、人的資源については、受け入れ体制の仕組みづくり、ローカルルールの構築が優先事項としてあげられました。
今回は山中氏、藤田氏の対談形式で、参加者からの質疑応答も交えながら予定時刻を一時間以上オーバーして活発な意見交換が行われました。 

第6回 2015.1.8
深田小次郎氏(しーまブログ)
徳雅美氏(NPO法人アマミーナ)

今回は「島内と島外を結ぶ~外国も視野に:これまでとこれから」をテーマに、しーまブログ編集長の深田小次郎氏、NPO法人アマミーナ理事長の徳雅美氏のお二人をお招きしました。

はじめに、深田氏より、「島と外をつなぐシゴト:これまでとこれから」と題して話題提供が行われました。深田氏は、インターネットで島興しをしたい、インターネット上に「しま」というコンテンツを作りたいという思いから、全国的に有名なアメブロの奄美群島版で、現在約4000ブログが集まる「しーまブログ」を2010年に設立されました。「しーまブログ」のブログサービス以外にも、グルメガイド「みしょらんガイド」、不動産情報「島ズム」、東京で島ファンのために開催している「Dearどぅしでぃや」、「シマッチュ先輩の情熱教室」、「空き家プロジェクト」、「求人サービス」などの紹介がなされました。また、一番の問題として情報の共有があげられ、行政からの情報がなかなか集まらないこと、情報に偏りがあることなどから、島の情報を一元化する群島イベントカレンダー「SABAKURU」、観光キュレーションサイト「奄ZONE(アマゾン)」、GPSと連動して島を検索できるサイト「Shimagle(シマグル)」など、今後展開する予定のシステムについても紹介がなされました。

課題としては、行政からのオファーがあれば組んでやりたいという思いもある一方で、金銭的には困難でも行政に頼らずどこまでできるか、ということがあげられました。今後はさらに情報を集め、その情報を元に人が動いたり、様々なことが生まれるようなしかけを作りたい、経済が落ち込まないためにも人口を増やしたいといったこともあげられました。

次に、徳氏から、奄美市に生まれ、現在のカリフォルニア州立大学チコ校で勤務されるに至った経緯や、2010年にNPO法人アマミーナ設立に至った経緯、目的、今後の方向性についてお話をいただきました。アマミーナは、「未来を担う子ども達のために、奄美から世界へ、世界から奄美に」というスローガンのもと、奄美にコミュニティカレッジを作ることを最終目的としており、現在、奄美市公民館委託事業で公民館の管理運営をしながら行っている自主事業の「米国短期留学プロジェクト」、「英語DEアート&サイエンス」、「ハロー先輩!」講演会シリーズなどが紹介されました。

また、来島者から見た奄美の問題として、街の美観の統一性がないこと、街中に緑が少ないこと、車が多いこと、街中特に公共の場(空港、港、公園等)にパブリックアートがないことなどが指摘され、これらの問題に対処する方法として、今徳氏が計画しているアートで奄美市を活性化するプロジェクト、「公共野外アートin奄美」やアートレジデンスプログラム(内外からアーティストや学生を公募し空き家を利用しての滞在型アート作成の場の提供)、その作成発表の場として「ビエンナーレ(2年毎)」、「トリアンナーレ(3年毎)」についても紹介がなされました。

最後に、アマミーナ設立時から大きく変わったこととしてインターネットの普及によるオンライン教育が上げられ、建物(ハード)がなくてもネット(ソフト)を通してのバーチャルな空間でもコミュニティカレッジを構築できるのではないか、アマミーナの今後の方向性として委託事業後をどうするのか、コミュニティカレッジを恒久的で持続性のあるものとしてどう実践していくのか、といったことが課題としてあげられました。

この後、参加者からの質疑応答も交えながら活発な意見交換が行われました。 

2013年度

世界自然遺産の指定をどのように活用し、奄美大島での地域の環境や文化を踏まえたまちづくりを進めるために、地元の専門家や団体と連携して共同で調査研究を行い、「聞き書き シマのくらし、つなぐ思い」を作成しました。また、2012年度までの研究成果を「鹿児島環境学特別編」(南方新社刊)にまとめ、鹿児島県環境林務部自然保護課と協同で「鹿児島の100人の100の風景」(南日本新聞開発センター)を発行しました。

2012年度:鹿児島環境学国際シンポジウム2012「奄美、世界遺産への道」

鹿児島大学では、2012年11月2日、世界自然遺産登録の有力な候補地である奄美群島について、登録の可能性と課題、世界遺産を活かした地域づくりについて考える機会として国際シンポジウム2012「奄美、世界遺産への道」を開催し、約330名が参加しました。

はじめに主催者を代表し、吉田浩己学長から「奄美群島の持つ価値や世界遺産登録へ向けた課題などについて、地域の方々、行政、大学が一緒に一体となって考える機会としたい」と、環境省大臣官房審議官の星野一昭氏から「シンポジウムが世界遺産の登録・管理に向けた関係者の皆さんの参画のスタートとなることを期待します」と挨拶がありました。

岡野隆宏特任准教授からの世界遺産登録の条件、評価基準やプロセスなどについての概要説明に続き、国際自然保護連合(IUCN)世界保護地域委員会会員で、わが国の世界自然遺産の推薦・登録に貢献してきたレスリー・F・モロイ氏が、実際に奄美・琉球諸島を視察した結果を踏まえ「奄美群島の世界遺産の可能性と課題」と題した基調講演を行いました。モロイ氏は、世界自然遺産登録のための4つの評価基準のうちⅸ〔生態系〕が最高のアプローチであるとした上で、注意深く他の亜熱帯島嶼地域と比較分析することが必要と指摘。また、推薦に向けては生態系の法的保護措置の欠如など解決すべき課題があるとして、時間をかけて「完全性」の問題を克服し、世界自然遺産に登録された小笠原諸島の計画的手法に着目すべきと助言しました。

続いて、鹿児島県自然保護課、鹿児島環境学研究会、NPO法人徳之島虹の会からそれぞれ取組状況報告が行われました。

休憩を挟み、モロイ氏、奄美群島市町村長会会長の大久保明氏、奄美長寿食文化研究家の久留ひろみさんらが登壇し、パネルディスカッション「奄美、世界遺産への道」が行われました。ディスカッションでは自然の価値に加え、食文化や闘牛などの特徴的な文化についても紹介があり、世界遺産を契機とした自然と文化を活かした地域づくりについて議論がなされました。また、参加者から寄せられた「世界遺産登録に伴う負の側面へ対策はどうするか」、「保護・保全を行うスタッフ養成の拡充が必要」などの質問に、パネリストがそれぞれの立場から意見を述べ、専門家・地域・行政・大学の意見を交換する有意義な機会となりました。

※本シンポジウムの内容は、「鹿児島環境学特別編」(南方新社刊)に収録されています。

2012年度 シンポジウム 奄美大島の生物多様性

2012年7月7日、鹿児島大学にてシンポジウム「奄美群島の生物多様性」を開催しました。

本シンポジウムでは、豊かな生物多様性をもち世界自然遺産の候補地となっている奄美群島の生物多様性や特異性について、植物・動物など異なる分野の研究者からの話題提供が行われました。

はじめに、吉田浩己学長から挨拶があり、平成20年度から実施している「環境」の教育・研究推進を目的する「鹿児島環境学プロジェクト」と今年度から開始した奄美群島の生物多様性を多様な視点で把握する「奄美プロジェクト」の共同企画により本シンポジウムが開催されることが紹介されました。

岡野隆宏教育センター特任准教授の趣旨説明につづき、学内外の研究者ら7名から、アマミノクロウサギ、アマミヤマシギなど奄美固有の動物と外来種の影響、オキナワウラジロガシを特徴とする徳之島の森林構造、奄美の特異な昆虫相、植物種数の推定、非海産貝類及び陸産・淡水産カニ類の地理的分布など幅広い分野からの報告が行われました。また、今年度から始まった鹿児島県の生物多様性保全地域戦略の策定、鹿児島県版レッドデータブックの見直しについての紹介がありました。

引き続き、総合討論が行われ、各報告に関する質問をはじめ、開発が進む奄美の現状や国・県の環境戦略などについて活発な意見交換が行われ、奄美群島の生物多様性について理解を深める有意義な機会となりました。

当日は、時折強い雨の降るあいにくの天候でしたが、学内関係者、行政関係者だけでなく、学生や一般の方々など幅広い層から155名の参加があり、奄美群島の生物多様性への関心の高さがうかがえました。

2011 年度:鹿児島環境学ミーティングin瀬戸内「瀬戸内の暮らしと世界遺産」タイトル

2012年2月21日(火)、大島郡瀬戸内町において、鹿児島環境学の一環として鹿児島環境学ミーティングin瀬戸内「瀬戸内の暮らしと世界遺産」を開催しました。

本ミーティングは、2009年1月に稲盛会館で開催した鹿児島環境学シンポジウム、2009年9月に奄美市名瀬で開催した公開セミナー、2011年1月に大島郡伊仙町で開催した徳之島フォーラムに続く4回目の鹿児島環境学イベントであり、鹿児島大学の主催で大島郡瀬戸内町の役場職員、漁業組合、森林組合、観光協会などの地元関係者、約40名を対象に開催したものです。

「瀬戸内の暮らしと世界遺産」をテーマに、奄美群島で現在、世界自然遺産に向けた取組が進められている中で、地域の方々に対して十分な情報が提供されているとは言えない状況にあることから、世界遺産の制度、小笠原諸島など世界遺産に登録されている他地域の現状などについてご説明した後、奄美群島において世界遺産を上手に暮らしの豊かさにつなげるための議論、自由な質疑応答など意見交換を行い世界遺産に対する疑問を解消する場とすることを目的としました。

まず、小栗有子(鹿児島大学生涯教育センター)からミーティングの趣旨説明、続いて、岡野隆宏(鹿児島大学教育センター)から「小笠原諸島の世界遺産登録の経緯とその影響」について話題提供が行われ後、 自由な質疑応答など意見交換を行い

最後に、引き続き地域の方々に対して情報を提供していくこと、また共有していくことを確認し、盛会のうちに終了しました。

2010 年度:徳之島フォーラム「徳之島の未来、世界遺産」

2011年1月10日、大島郡伊仙町において、鹿児島環境学の一環として徳之島フォーラム「徳之島の未来、世界遺産」を開催しました。
本フォーラムは、平成21年1月に稲盛会館で開催した「鹿児島環境学シンポジウム」、平成21年9月に奄美市名瀬で開催した「奄美公開セミナー」に続く3回目の鹿児島環境学イベントで、「徳之島の未来、世界遺産~島の暮らし・産業・環境はどのように変わっていくのか」をテーマに、鹿児島大学、環境省、鹿児島県、徳之島町、天城町、伊仙町の主催で開催し、約440名が参加しました。
まず、吉田浩己学長から「徳之島は農業や生活を営むための土地とそれを支えるものがバランスよく整った長寿と子宝の島。あらためて島の豊かな自然環境・文化を確認し今後の島づくりを」、渡邉綱男 環境省自然環境局長から「環境文化型の新しい公園を地域の皆さまとつくりたい。世界自然遺産登録を目指し、人と自然が共生する島を世界に発信してほしい」と挨拶がありました。
続いて、石上英一 人間文化研究機構理事(元東京大学史料編纂所所長)が「日本史の中の徳之島」、小野寺浩 鹿児島大学学長補佐が「徳之島という地域-自然、社会」と題して基調講演を行いました。
引き続き、第1部「徳之島とは何か」、第2部「徳之島の地域づくりを考える」をテーマにパネルディスカッションが行われ、鹿児島環境学WGメンバー、地元3町長、パネリストなどが意見交換しました。
最後に、奥田直久氏の提案による「徳之島フォーラム宣言」を採択し、世界自然遺産登録を目指すことを確認し、盛会のうちに終了しました。
本フォーラム内容は、「鹿児島環境学Ⅲ」(南方新社刊)に収録されています。

また、シンポジウムの開催の様子は下記動画(YouTube)でもご覧いただけます。

総合司会 小栗有子鹿児島大准教授、環境教育

主催者挨拶  鹿児島大学学長 吉田浩巳、環境省自然環境局長 渡邉綱男
基調講演1「日本史の中の徳之島」石上英一(人間文化研究機構理事)
基調講演2「徳之島という地域ー自然、社会」小野寺浩(鹿児島大学学長補佐)
 
パネルディスカッション
Ⅰ部「徳之島とは何か」
進行・西村明 鹿児島大准教授 宗教学、宗教人類学
1-1
1-2
1-3
1-4

Ⅱ部「徳之島の地域づくりを考える」
進行・井村隆介 鹿児島大准教授、地質学
2-1
2-2
2-3

徳之島フォーラム宣言 
奥田 直久(那覇自然環境事務所所長)

2009年度:奄美公開セミナー「世界遺産と奄美新時代」

2009年9月26日、奄美市名瀬(奄美観光ホテル)で、環境省、県、奄美群島広域事務組合との共催により、奄美公開セミナー「世界遺産と奄美新時代」を開催しました。

本セミナーは、昨年10月から始まった鹿児島環境学プロジェクトの一環であり、今年1月24日に鹿児島大学で行われた鹿児島環境学シンポジウムの現地版です。

セミナーには、高校生や一般の方々も含め100名が参加。鹿児島大学環境学メンバーの他、奄美の自然保護・文化・観光関係者、行政機関を加えた15名のパネリストが「世界遺産と奄美」、「奄美新時代への展望」をテーマに4時間にわたって熱心に討論され、「世界自然遺産への登録は、地域を豊かにしていくための手段であり目的ではない。」、「地域の開発と自然保護は二者択一の問題ではなく、その間のどこで調整していくかが知恵と工夫である。」などの意見が交わされました。

※本セミナーの内容は、「鹿児島環境学Ⅱ」(南方新社刊)に収録されています。

2008年度:鹿児島環境学シンポジウム

2009年1月24日、鹿児島大学では、鹿児島環境学シンポジウムを開催しました。

「鹿児島環境学」は、現場から発想し環境問題への新たな提案を目指したもので、本シンポジウムを通じ、鹿児島の環境について様々な角度から検証することを目的として開催されました。会場には293名という大勢の市民や関係者が訪れ、盛況なシンポジウムとなりました。

基調講演1では、「地球環境問題とは何か」と題して、環境省総合環境政策局長 小林光氏による講演がありました。地球環境問題の概要と現状、国際的な動向や政府の施策とその意味について説明、また自ら建築したエコハウスの体験についても説明されました。

基調講演2では、「世界遺産の森から学んだこと -アフリカと屋久島を訪ねて-」と題して、京都大学大学院理学研究科教授 山極寿一氏による講演がありました。30年来調査しているゴリラの生態やアフリカと日本の共通性について説明され、また、サル研究の出発点だった屋久島とカフジ(アフリカ)の交流についても紹介がありました。

パネルディスカッションでは、「鹿児島環境学への提言」をテーマに、それぞれの専門的立場から鹿児島の特徴や県内外の環境問題の体験について意見を交わしました。

(コーディネーター:小野寺浩学長補佐、パネリスト:井村隆介准教授、河合渓准教授、西村明准教授、アドバイザー:小林光局長、山極寿一教授)

最後に、「鹿児島環境学宣言」を西村明准教授より読み上げられ、シンポジウムは終了しました。

※本シンポジウムの内容は、「鹿児島環境学Ⅰ」(南方新社刊)に収録されています。