2019年度:大島郡龍郷町と鹿児島大学(産学・地域共創センター、大学院理工学研究科)の共同研究「環境文化型集落集会施設計画に向けた基礎的研究」

産学・地域共創センターと龍郷町との共同研究「環境文化型集落集会施設計画に向けた基礎的研究」(2019年度)を大学院理工学研究科(工学系・建築学プログラム)と共に実施しました。

(共同研究にいたるまでの背景)
2017年3月7日に誕生した奄美群島国立公園には二つの特徴があります。ひとつは、景観が重視されたこれまでの国立公園と違い、景観だけでなく、自然とそこにすむ生き物をあわせた生態系を守る「生態系管理型」であること。もうひとつは、人と自然とのつながりがわかる文化や集落の景観を守る「環境文化型」であることです。

今回、共同研究の舞台となった龍郷町秋名・幾里集落は、自然環境と調和した文化景観(古道、サンゴ石垣、稲作にまつわる風習等)が評価され、集落の一部が国立公園に組み込まれています。しかし、国の重要無形文化財であるアラセツ行事に地域ぐるみで取り組み、伝統行事や集落独自の文化が残る一方で、少子高齢化等の影響でこうした集落の営みをこのまま将来につなぐことが難しくなっています。

鹿児島環境学研究会では以前から秋名・幾里集落で、環境文化に関する共同調査や学習会を集落の方々と進めながら、土地に根ざした文化の価値を見直す活動を行ってきました。
そして、老朽化した秋名集会施設の建て替えにあたり、集会施設を「環境文化の学び舎」と「自然と調和した持続可能な集会場」にしたいという要望が集落の方々から立ち上がり、今回の共同研究に結びつきました。

(共同研究実施の様子)
2019年度は、秋名・幾里集落の環境文化をソフトとハードの両面から継承・発信する「環境文化型」の集会施設の基本構想づくりに取り組みました。
大学側の参加者は、建築分野(ハード)を担当する大学院理工学研究科(工学系)建築学専攻の柴田晃宏准教授と鷹野敦准教授、そして、環境分野(ソフト)を担当する産学・地域共創センター(鹿児島環境学担当)の星野一昭特任教授と法文学部法経社会学科の小栗有子准教授です。また、この共同研究を、建築分野では、同大学院建築学専攻の修士課程の教育課程の一貫として、環境分野では、小栗ゼミの教育活動の一貫として、それぞれの学生の皆さんが参加しました。

建築分野と環境分野の共同で実施した3回にわたる基本構想づくりワークショップでは、秋名・幾里集落の方々から集落の自然環境、歴史、文化などの話を聞き取り、集会所への想いや願いを引き出すことを中心にしました。
集落の小学生から高齢者の方まで多様な世代、多様な立場の方々が参加し、小グループに分かれて、それぞれの想いを語り合いました。学生の皆さんは、話し合いを促すファシリテータ役や記録係として参加し、集落の方々から多くのことを学び取ることができました。

この3回のワークショップを通して、学生の皆さんは集落が育んできた生活の知恵を学び、目に見えない集落の方々の想い受け取ることができました。そして、建築学専攻の学生を中心に、専門的知見を地域に還元することができました。
また、これからの基本設計に向けて、既存の集落施設との連携や、伝統行事や伝統料理、川遊びなど次世代に継承したい環境文化の内容とその方法など、新しい集会施設の姿について、集落全体で一体感をもって取り組んでいく必要性があることを集落の方々と確認しました。

※詳しくは、鹿児島大学環境報告書 第2章 環境報告(11~12ページ)をご覧ください。
鹿児島大学 環境報告書2020pdfファイル (29.3MB)
https://www.kagoshima-u.ac.jp/about/2020kankyouhoukokusyo.pdf