2019年度: 第3回環境文化シンポジウム 「名瀬のむかし、奄美大島のこれから 」

 2019年9月23日(月・祝)に「第3回環境文化シンポジウム 名瀬のむかし、奄美大島のこれから -名瀬から発信する奄美の環境文化を考える」を奄美市AiAiひろばにて開催し、約100名の方に参加していただきました。
  鹿児島環境学研究会の岩田治郎氏の司会の開会宣言のあと、鹿児島大学の馬場国際・研究担当理事による主催者挨拶、共催者である環境省那覇自然環境事務所東岡所長(環境省奄美自然保護官事務所千葉上席自然保護官による代読)、鹿児島県環境林務部自然保護課羽井佐課長による共催者挨拶がありました。

第1部「シマのくらしと名瀬の街」では、小栗有子准教授(法文学部)がコーディネーターとなり、小栗有子准教授から、環境文化について、これまでの鹿児島環境学研究会の取組を含め解説があった後、 当日の午前中に開催された関連プログラム『名瀬の街散策 ニシ・ヒガシ』について、案内人の奄美市立奄美博物館館長 高梨修さん(ニシ担当)、奄美郷土研究会副会長 岩多雅朗さん・丸田泰史さん(ヒガシ担当)から報告していただきました。歴史とともに、名瀬の街の海岸線の形や河川の流れを大きく変わってきたこと、寄留商人のあとを引き継いだシマの人々が街を発展させていったこと、蘭館(らんかん)橋に秘められた悲恋物語など、話の尽きない第1部となりました。

第2部「名瀬のむかしと今を振り返り、名瀬とシマのこれからを考える」では、星野一昭特任教授をコーディネーターに、第1部から引き続いて、案内人の奄美市立奄美博物館館長 高梨修さん、奄美郷土研究会副会長 岩多雅朗さん、名瀬八月踊り保存会事務局長 當光二さん、宇検村出身のサーモンアンドガーリックの新元一文さん、市街地で25年間ダグウッドサンドを営むオーナーの南和仁さんにご登壇いただきました。當光二さんからは、シマ口の唄とシマそれぞれの踊りを伝承していく難しさとその工夫について述べられ、南和仁さんは、スマートフォンやSNSの発達で若者世代の購買行動が大きく変わったこと、新元一文さんからは、宇検村郷友会を例に、壮年・若者世代に継承していくような、多様な「縦」のつながりをつくっていく難しさが語られました。

名瀬の都市部と農村部のつながりについては、会場から、奄美市住用町市地区区長の山下茂一さんより、都市部とのアクセスが向上したことで、医療面等で便利になった反面、人口流出を招いたことが述べられ、奄美市教育委員会の方からは、奄美大島島内の山村留学制度について里親確保の難しさや、子どもの意識の変化により、送迎での留学が好まれている現状について話がありました。最後、星野一昭特任教授が「世界自然遺産登録されるということは、人類の宝として守るべき、遺すべき自然があることを世界に認められ、注目されるということ。世界自然遺産登録を機会に、奄美大島の皆さんがこれからどういうシマにしていきたいかを語っていけるようにしてほしい」と述べられました。

シンポジウムの最後は、小栗有子准教授が、「奄美をはじめ、日本全国が人口減少で岐路に立っている。昔は海も山も人も、今より近かったのだろう。人と自然の関係が切れることで、人との関わりも希薄になっているのではないか」「踊りや行事の伝承を形ではなく、伝承していく意味を考え、伝承する楽しみへと工夫してほしい」という言葉があり、今回のシンポジウムでは、学内のポスターをきっかけに参加された地元の高校生の皆さん、奄美大島で研究活動をされている島外の大学生の皆さんが参加されていたことから、2年前の環境文化シンポジウムでの高梨修さんの発表を例に、「年配者の方々が大切にしてきたことを、若い世代の暮らしや楽しみとして、どう紡ぎ直していくのか問われていくと思う。皆さんが持っている思いや経験、つながりはジグソーパズルのピースのひとつひとつ。そのピースを持ち寄ってひとつの絵にすることが環境文化。縁あって集った皆さんがここを始まりとして、これからの奄美をいっしょにつくっていってほしい」と語りかけ、締めくくられました。

※詳しくは、電子ブック:第3回環境文化シンポジウム記録集をご覧ください。