2018年度:シンポジウム シマ(環境文化)を考える 

2019年1月12日(土)に「シンポジウム  シマのくらし(環境文化)を考える」を大和村防災センターにて開催し、約60名の方に参加していただきました。

鹿児島環境学研究会の岩田治郎氏の司会の開会宣言のあと、鹿児島大学の高松研究担当理事による主催者挨拶、共催者である環境省那覇自然環境事務所東岡所長(環境省奄美自然保護官事務所千葉上席自然保護官による代読)、鹿児島県環境林務部自然保護課羽井佐課長による共催者挨拶がありました。

第1部「シマの環境文化を知る・共有する」では、小栗有子准教授(法文学部)がコーディネーターとなり、龍郷町地域おこし協力隊村上裕希さん、秋名アラセツ行事保存会長窪田圭喜さん、住用町市集落区長山下茂ーさん、大和村国直集落区長村上惠子さん、NPO法人TAMASU代表中村修さんに、パネリストとして登壇いただきました。

龍郷町秋名・幾里集落、住用町市集落、大和村国直集落それぞれの散策の様子を紹介するとともに、ほかの集落の方から見えた共通点や相違点についてそれぞれに意見が出されました。そして、昨年度に開催した「秋名・幾里の環境文化を知る・見つけるシンポジウム」で採択された宣言を龍郷町秋名集落区長隈元巳子さんに読み上げていただき、集落が大切にしている環境文化は、それぞれの集落の風景の中にも残されていることを確認しました。

 第2部「シマの伝統行事のこれから」では、第1部に引き続き、小栗有子准教授をコーディネーターに、伝統行事を受け継ぐ先輩世代として、住用町見里集落の川畑安秀さん、秋名アラセツ行事保存会長窪田圭喜さん、国直集落老人クラブ会長晨原重光さん。後輩の若者世代として、住用町見里集落の師玉当太さん、龍郷町秋名集落の重田美咲さん、大和村青壮年団長の村上京助さん、また、都市部と集落を結ぶあまみエフエム・ディ!の麓憲吾さんにご登壇いただきました。

伝統行事の過去、現在、未来について先輩世代と後輩世代と話し合う中で、伝統行事は他の集落イベントと違い、神ヘ感謝の念が大事にされていることや、活動を通してユイの心や使命感が育まれていることが確認されました。先輩世代からは、これまでの継承の仕方を大切にしてこれからも伝統行事を続けてほしいことが語られ、後輩世代からは、子どもの頃からの伝統行事ヘの憧れや、生活環境の変化とともに伝統行事のあり方を見直しながら、継承していきたいという思いが語られました。

第3部「移住者×地元で「シマの価値」再発見」では、星野一昭特任教授(産学・地域共創センター)がコーディネーターとなり、Iターンの移住者側として、大和村国直集落の竹下宏太郎さん、住用町和瀬集落の原木洋子さん・原木恵一さん夫妻、龍郷町秋名集落の藤井菊美さん。受入側として、龍郷町秋名集落区長隈元巳子さん、NPO法人すみようヤムラランド理事長満田英和さん、NPO 法人TAMASU代表中村修さんにご登壇いただきました。

藤井さんは、移住体験をきっかけに魅了された、田んぼで育つマコモダケと秋名・幾里集落の人たちの人柄について、東日本大震災をきっかけに住用町和瀬集落に移住してきた原木さん夫妻は、全員参加を心がけている集落活動や伝統行事の魅力を、国直集落でカフェを経営する竹下さんは、不便を楽しむ面白さがあることを伝えてくれました。受入側からは、集落活動を支える「活動人口」と「集落組織」のあり方をテーマに、集落行事への使命感やシマの「結いの精神」 や、負担にならないような集落活動の事例紹介、また、活動に参加してもらう難しさ等をお話してしていただきました。

 シンポジウムの最後は、小栗有子准教授が「シマには、ひとの営みと自然が生み出す環境文化を味わえる価値がある」こと、それを持続するためには、今後も集落聞との対話、世代聞での対話、内と外の対話の大切であり、今後もそうした対話が続いていくことへの期待を話され、司会の岩田治郎氏が、5年前に鹿児島市で開催された奄美復帰60年シンポジウムでの元ちとせさんの言葉(「言葉とリズムと音が、お話のようにメロディーに乗って、昔の人の物語や風景が目に浮かんでくるのが島唄の魅力だと思う。遠い遠い記憶にたどり着く気がする。見たことがないものでも、見たような気がするのは、それは命が巡り、受け継がれいるということだと思う」)を紹介し、この言葉が環境文化の根底にはあるのではないかというお話で締めくくられました。

※詳しくは、 電子ブック: 2018年度【シンポジウム シマのくらし(環境文化)を考える】記録集をご覧ください。