2012年度:鹿児島環境学国際シンポジウム2012「奄美、世界遺産への道」

鹿児島大学では、2012年11月2日、世界自然遺産登録の有力な候補地である奄美群島について、登録の可能性と課題、世界遺産を活かした地域づくりについて考える機会として国際シンポジウム2012「奄美、世界遺産への道」を開催し、約330名が参加しました。

はじめに主催者を代表し、吉田浩己学長から「奄美群島の持つ価値や世界遺産登録へ向けた課題などについて、地域の方々、行政、大学が一緒に一体となって考える機会としたい」と、環境省大臣官房審議官の星野一昭氏から「シンポジウムが世界遺産の登録・管理に向けた関係者の皆さんの参画のスタートとなることを期待します」と挨拶がありました。

岡野隆宏特任准教授からの世界遺産登録の条件、評価基準やプロセスなどについての概要説明に続き、国際自然保護連合(IUCN)世界保護地域委員会会員で、わが国の世界自然遺産の推薦・登録に貢献してきたレスリー・F・モロイ氏が、実際に奄美・琉球諸島を視察した結果を踏まえ「奄美群島の世界遺産の可能性と課題」と題した基調講演を行いました。モロイ氏は、世界自然遺産登録のための4つの評価基準のうちⅸ〔生態系〕が最高のアプローチであるとした上で、注意深く他の亜熱帯島嶼地域と比較分析することが必要と指摘。また、推薦に向けては生態系の法的保護措置の欠如など解決すべき課題があるとして、時間をかけて「完全性」の問題を克服し、世界自然遺産に登録された小笠原諸島の計画的手法に着目すべきと助言しました。

続いて、鹿児島県自然保護課、鹿児島環境学研究会、NPO法人徳之島虹の会からそれぞれ取組状況報告が行われました。

休憩を挟み、モロイ氏、奄美群島市町村長会会長の大久保明氏、奄美長寿食文化研究家の久留ひろみさんらが登壇し、パネルディスカッション「奄美、世界遺産への道」が行われました。ディスカッションでは自然の価値に加え、食文化や闘牛などの特徴的な文化についても紹介があり、世界遺産を契機とした自然と文化を活かした地域づくりについて議論がなされました。また、参加者から寄せられた「世界遺産登録に伴う負の側面へ対策はどうするか」、「保護・保全を行うスタッフ養成の拡充が必要」などの質問に、パネリストがそれぞれの立場から意見を述べ、専門家・地域・行政・大学の意見を交換する有意義な機会となりました。

※本シンポジウムの内容は、「鹿児島環境学特別編」(南方新社刊)に収録されています。