令和2年度「第4回環境文化シンポジウム島と東京を結びこれからの奄美の環境文化を考える」記録集
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-5-物たちがまあ隔離されて今に引き継がれているのが、この奄美諸島、沖縄諸島という位置づけになります。そういうこともありまして、今、世界遺産の登録を目指す動きが進められています。一昨年10月にIUCNの現地調査があったり、去年の6月、7月にはユネスコの会議が中国で開催される予定でしたけれども、新型コロナウイルスの影響で延期になりました。多分、今年の同じぐらい時期、6月7月には延期された会議が開催をされて、登録の可否が最終的に決定を下されるというような段階になっています。その世界遺産登録のためでもあるんですけれども、奄美群島は平成29年、2017年の3月7日に奄美群島国立公園という国立公園が誕生しました。日本で最も新しい国立公園と言われています。この国立公園は、世界遺産の登録のためだけではなく、改めて奄美の自然の生態系の素晴らしさや、人と自然とのつながりの中で生まれた文化、環境とともに育ってきた文化が評価をされて国立公園となっています。そういう意味では、自然の特異性もあり、その自然の中で暮らしてきた人々、人と自然とのつながりの中で生まれた景観ということも国立公園の重要な部分になっているということです。奄美群島国立公園というのは従来にない「生態系管理型」というものと「環境文化型」という2つのコンセプトを持っています。「生態系管理型」というのは、基本はきちんとモニタリングしながら生態系の状態、生物多様性の状態を評価し、うまく保護管理にフィードバックしていくというような部分ではありますけれども、一方で「環境文化型」という観点があります。これは人と自然の関わりの中で形成されてきた独自の風景を将来に守りつないでいくということでもありますけれども、その環境文化型の国立公園としてのシンポジウムということを意識しているものです。過去3回のシンポジウムでは、奄美大島の自然環境に根ざした集落の生活文化を見つめ直し、自然とのかかわりの変化を読み解くことで、奄美の未来を地域の皆さんと共に考えてきました。今日の第4回シンポジウムですけれども、この環境文化をテーマにして、島内の世代間をつなぎ、島と東京つないで議論を深めていただくことにより、地域の皆さんが育んでこられた自然とともにある暮らしの価値を再認識していただきたいと思っています。そして、本日のシンポジウムを通して、環境文化の継承を通じた地域発展につながっていくこと、さらには世界遺産登録を目指す奄美から世界に向けた発信につながっていることを願っております。最後になりましたが本シンポジウムの開催準備を進めていただきました鹿児島大学の皆様パネリストとコメンテーターの皆様をはじめ、多くの関係者の皆様に感謝を申し上げます。よろしくお願いいたします。-阿部所長、どうもありがとうございました。

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