- 51 --10- 以前、僕はノネコ・ノラネコに関して興味がなく、ノネコ・ノラネコを殺処分することに対してあまり抵抗を持っていなかったのですが、生物部としての活動を通して考えさせられました。実際の調査でも複数のノラネコを間近で見て、このような奄美の在来種にとって危険な環境を「変えていかなければならない。」と思いました。 今回、ノネコのシンポジウムを通して、より多くの人に奄美のノネコ問題の現状を知っていただけたらと考えています。村 松 健(ピアニスト/作曲家) ピアニスト・作曲家の村松健です。僕は島暮らしの傍ら、耳にされる方が自分自身に還るようななつかしい音楽をここ奄美大島から世界に向けて発信しています。僕が島に流れ着いた20数年前、人とマヤ(シマグチでネコのこと)たちが幸せに共存する姿は、この土地の居心地の良さの象徴のような眺めでした。旅で島にいらっしゃる方達が、マヤたちがゆるっと過ごすそんなシーンに出会う度に島らしさを感じてシャッターを切っているのを、今も見かけます。しかしながら、僕の最愛の3匹の共同生活者たちは、いずれもかつて生きていくのが困難な状況にある子猫たちでした。ノネコそして野良猫の問題は、猫という存在を人が帯同し共存してきたことを考えれば、誰ひとりそれに関わらない方はいないのだ、ということを僕はメッセージしたい。そしていつまでも人とマヤが幸せに暮らすそんなこの島であるために、ひとりでも多くの方に自分のこととして考えてもらう、そんなきっかけになればと願っています。コーディネーター 星 野 一 昭(鹿児島大学特任教授) 私は昨年夏まで36年間、自然保護を専門とする公務員でした。環境省を中心に外務省や鹿児島県でも働いたことがあります。国際条約に基づき登録される世界自然遺産の価値がある地域が二つも存在することからも明らかなように、鹿児島は日本の自然環境を特徴づける重要な地域です。本年4月からは、鹿児島の自然環境や生物多様性の保全に少しでも役立ちたい思いから、鹿児島環境学や地域貢献を担当する特任教授として鹿児島大学で働いています。 今回のシンポジウムは、奄美地域の世界自然遺産登録にとって大きな課題となる「ノネコ問題」をテーマに開催しました。パネルディスカッションでは、奄美の明日を語るという視点から「ノネコ問題」について考えます。パネリストの皆さんは奄美大島に住み、ノネコや飼い猫、野良猫に何らかのかかわりを持っている方々です。どのようなかかわりを持ち、現在の奄美大島の状況をどのように考えているのかについて語っていただき、明日の奄美を会場の皆さんとともに考えたいと思います。 全国各地で飼い猫や野良猫の問題が大きく取り上げられ、室内飼育や避妊・去勢手術の呼びかけ、野良猫の数を増やさず地域で管理する地域猫の取組などが進められています。これらの取組は人間の側の都合だけでなく、猫の心身の健康を考えた取組でもあります。 世界自然遺産に登録されようとしている奄美地域における取組は全国からも注目されています。
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