平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 50 --8-パネリストからのメッセージ久 野 優 子(奄美猫部部長) 奄美市名瀬大熊出身の41才。 高校卒業後、進学と同時に島を出て、愛知、山梨、東京と、接客業中心に場所も職業もさまざまな経験をし、20代を過ごしました。 29才の時にUターンし、今から9年前、夢だったカフェ「COVO TANA」を地元大熊にオープンしました。 ところが、カフェの立地場所が漁港・公園に隣接しており、餌も豊富、捨て猫も多いという場所で、まずは野良猫の多さにびっくりし、カラスに食べられた子猫の死体や、病気でボロボロの猫もたくさん見てきました。猫だけではなく、犬の糞の始末の悪さ、ゴミのポイ捨て等、モラルの悪さを目の当たりにしました。 当然、野良猫はお店にも迷い込んで来るし、弱っていると無下にも出来ず、世話をせざるを得ない状況で、そのうちの数匹は自分で飼う羽目になり、猫の多さにとても困っていました。 そのうち、犬や猫の殺処分数が多い事、ノネコ問題等も知るようになり、あまりの島の現状に愕然としました。 犬や猫を飼う場合、「不妊手術、猫なら室内飼育、犬なら放し飼い禁止は当たり前の事」と、島を出ている間に自然とすり込まれていましたが、奄美では適正飼育を訴える人も団体も無いに等しい状況だった為に、ここまで遅れてしまったんだなと考えるようになりました。 そんな時、奄美の野生動物に惹かれて移住していた伊藤圭子獣医師(奄美動物病院勤務)と出会い、猫問題で意気投合し、奄美猫部発足に至ります。 現在は、カフェの営業の傍ら猫部の活動に取り組んでいますが、猫の多さと現状の過酷さを益々痛感しています。 猫問題は、一部の人だけが頑張れば良いというわけではなく、世界自然遺産登録も視野に入っている今、奄美の活性化の為、モラルアップの為にも、島民全員で考えなければならない問題だと思います。このシンポジウムが機運醸成のきっかけになれば嬉しく思います。阿 部 優 子(奄美哺乳類研究会代表) ふりかえってみると、子供の頃、学生時代、社会人になってからと、家や大学や職場にいつも身近にネコがいました。ヒト以外の動物に興味をもち、獣医師を目指すきっかけを作ってくれたのがネコだと言っても、あながち嘘ではないように思います。動物への興味がさらに自然、野生動物へと向かい、縁あって奄美大島で暮らし始めました。そして、じわじわと奄美の自然や風土の虜になっていきました。その一方で、遠い遠い昔、ヒトが渡ってくる前からこの島で生きてきたアマミノクロウサギやケナガネズミなどの野生動物をネコが食べている現実があることを知りました。 ネコはヒトと共に生きる動物。ヒトがきちんと飼育していれば森に入ることはなかったはずです。このまま森にいるネコを野放しにしていたら、ネコに対する防御能力を身につけていないこの島の野生動物たちはどんどんネコに捕食されて、絶滅してしまうかもしれません。 ヒトは森や海を利用したくさんの恩恵を受けてきたけれど、二度と利用できない形にしてしまっては恩恵もそれまで。そのことを先人たちは身を持って知っていたはずなのに、今を生きる私たちはどうで (4)パネリストからのメッセージ-9-しょうか?ネコの問題も根っこは同じ、自分のしたことが森や海に、野生生物に、さらに回り回って自分たちに、良くない影響を与えるかもしれない…そんなふうに未来や周囲のことを考えて行動することが大切だと思います。深 田 小次郎(しーま代表) 「島の情報が足りない」 島から出て、東京で生活する20代の気付きでした。 島の発展とは何なのかを考えるときに 必要なのは「情報」じゃないかという思いに至り、2010年2月「島の発展は情報量に比例する」という仮説をもとに、島民全員が記者となり、カメラマンとなって情報発信出来るしーまブログをスタートしました。 現在はグルメ情報「みしょらんガイド」や島の女性誌「amammy」などの出版も行い日々様々な情報発信を行っています。 私が育った笠利の集落は、ネコと人の距離が非常に近く、野良ネコが身近にいる環境でした。 猫を見つけたら自然と声をかけ、時には手に持っているお菓子をあげたものです。 集落の人の家では、野良猫と飼猫の境目がよく分からない猫たちが頻繁に出入りし、寄ってくる全ての猫を「ミー」と呼び面倒をみてあげていました。 「猫って自由でいいいなぁ~」 当時犬を飼っていた私は、繋がれている犬を不憫に思ったものでした。 しかしながら、猫の高い繁殖力は奄美の希少動物を脅かす存在になり、今後世界遺産を目指す奄美にとっても大変な問題だということを知り、ことの重大さを痛感しました。 地域住民が“猫”の正しい知識を共有し、対応策に取り組んでいくことが必要だと思います。 今後しーまブログでもこの問題について発信していかなければと思っています。 今日はみなさんの意見を拝聴しながら、私も一緒に考えていきたいと思っていますのでどうぞ宜しくお願いします。久 保 駿太郎(鹿児島県立大島高校生物クラブ) こんにちは、鹿児島県立大島高校生物部1年の久保駿太郎です。現在までに私が行ってきた活動について紹介したいと思います。 大島高校生物部では、数多くの観察会や研究会に参加し、自主的な調査も行って来ました。鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室で月に1、2回開かれている研究会や、「奄美シダの会」で毎月行われている観察会に参加しています。また、自主的な調査としては、奄美市南部の小湊地区でカエル類・ヘビ類の調査を行っています。その他にも水生生物の観察会やウミガメの産卵観察会、トンボの観察会、奄美野鳥の会の観察会に参加して来ました。また、大島高校では総合的な学習の時間に「Success Time」という、週に1時間自分の興味を持った講座を選択するというものがあります。その中に奄美の自然に関する講座があり、大島高校では35人の生徒が受講しています。講座の内容としては、毎回生物に関する様々な分野の研究者を招き、講義を行っていただくという内容です。このように大島高校では、生物部以外の生徒も奄美の自然について学習することが出来ます。

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