平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 35 -ますね。そういう生き物のこと、特に奄美大島だと希少な生き物のことを調べることによって、久保君自身、奄美の生き物に対する考え方が変わったと思いますか。久保:まず2点あって、以前はノネコや野良猫に関しては全く興味がなくて、対策として処分する、殺処分するということにもあまり抵抗は思っていなかったんですが、生物部として活動をしてきて、実際の調査で複数の野良猫を間近で見て、このような奄美の在来種とかに影響を与えている生物のような環境を変えていかないといけないなと思いました。 2つ目としては、希少種についてなんですけど。カエルの調査をしてみて、調査をする前はアマミノハナサキガエルや、イシカワガエル、オットンガエルのカエルは、1回の調査で1匹みられたらいいほうかなと思ったんですが、実際に調査をしてみると、多い日には100匹近く見られることもあったので、思ったよりは少なくないのかなと思いました。星野:ありがとうございました。特にネコの問題は関心を持ってノネコ、野良猫を見ていかないと、なかなか問題について考えようということはなかったということですね。生物部でこの問題を考えるようになって、じゃこれからも久保君、このネコの問題をずっと、今はこのパネリストの中で一番若いから、これからずっとネコ問題を考えてくれるかな。久保:これからも考えていきたいと、考えています。星野:よろしくお願いします。それでは久野さん、野良猫の状況をいろいろご自身でも把握するのに苦労されていると思いますけれども、そういった野良猫の状況を把握することの必要性だとか、把握した情報を取り組みにつなげるために、どういう情報の発信や共有をしていったらいいと思いますか。久野:そうですね。ノネコ、野良猫を合わせると、ノネコが600~1,200、野良猫はこれ推定でしかないんですけど、ネコ登録という飼い猫登録が奄美全島で3,000頭、それの単純に3倍くらいといわれていたりするんですけど。 そうすると9,000頭。その数を今すぐどうこうできるわけ……、できるとは思っていないですが。ただ、今、市町村でTNRをやっているんですが、それでも月に多くて40頭なんです。それで行政の人しかできないという今現在のシステムなので、9,000頭いる野良猫を月40頭とか、そういう数で絶対に追い付くわけがないと思います。理想を言うと、地域の人でこの対策はネコ嫌いの人にとってもいいことだと思うんですけど、地域の人でみんなでTNRできる仕組みを作るということ。行政がやっているTNRは、奄美はちょっと手術だけ先行してしまって、その後の管理が今行き届いていない状況だと思うんです。 その管理は、住民が協力しないと絶対に無理だと思うので。今、私の大熊のお店の周りだけ、せいぜい10~15頭くらいなんですけど、ほぼ全頭TNRが済んでいます。数も把握できているし、姿かたち、性別もすべて管理できているので、捨て猫や新入りの猫がくるととすぐ分かります。管理しているボランティアもお一人いて、その方が逐一教えてくれたり、連携も取れていたりするので、本当に管理が今100パーセントできている状態です。それが全島でできれば、すごく理想的な状況と思うんですけど。 ただ、現在ノネコを捕まえて、収容して、順化して、譲渡するという動きもあるんですけど。それはいいことだとは思うんですけど、1,200頭いるネコを一体何年かけたらいなくなるのだろうと。やはり途方もないことだと思いませんか、皆さん。私だけなんですかね。 実は、ノネコについて地元の人は、私もつい最近までそう思っていたんですけど、今も捕獲して安楽殺しているんだと思っていました。つい最近まで。本当に全くふつうの人はそう思っている人もいまだに多いと思うので、もうやめてしまっているのがもったいないというところなんですけど。 ノネコがそうやって大事に扱われてしまうと、やはり山に捨てる人は減らないと思うんです。こんだけ山に隣接した集落があるのに、絶対取り締まるのは無理ですし、いくら啓発で「いけないよ」と言っても、やはりいまだに、私の店の周りでさえ、ここ1年で何件かあります。ネコの遺棄が。なので、それを考えると

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