平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 34 -うことをしっかり皆さんで認識をして、そして足りない情報はどのようにしてみんなで調べるか。そんなことが大事ではないかと、今の議論を通じて感じました。<テーマ2:ノネコ問題についての情報の共有>星野:次のテーマ2は、ノネコ問題についての情報の共有です。ノネコ問題には今言ったような難しさもありますから、どのような情報をどういうふうにみんなで共有していったらいいのか。その点について、もう少し議論を深めていきたいと思います。その際、哺乳類研究会でいろいろ山の哺乳類の調査研究をされている阿部さんにまずお伺いをしたいと思います。ノネコについて何が分かっていて、何が分かっていないのか。そういう分かっていないことについて、今後どのような取り組みが必要だと思うのか。その辺について、ご意見をお願いします。阿部:あんまり自分が直接研究ということをしているわけではないんですけれども、会のメンバーの一人で、塩野崎さんという方がいまして、彼女が山にいるノネコのフンの食性分析を行った結果があります。それによると、フンの7割近くから固有の希少種の哺乳類が検出されているんです。特にアマミノクロウサギとか、ケナガネズミ、トゲネズミといった哺乳類のフンが多く……。フンではなくて、ごめんなさい。そういった生き物が検出されていまして。仮定の数値ではありますけれども、1頭のノネコが1年間で換算すると、クロウサギにしたら44頭、ケナガネズミにすると140頭、アマミトゲネズミにすると401頭も捕食する可能性があるというデータを出しています。 本当にすごい数だと思うんです、これは。環境省のノネコの推定頭数ということでも600~1,200頭、奄美大島にいるであろうというデータも出ていますから。希少なものばっかりを食べているわけじゃないと思うんですけれども、それは無視できない非常に甚大な影響をノネコが奄美の自然に与えてしまうだろうというふうに思います。 ただノネコだけが問題なのかというと、やはり分かっていないことがありまして、実際に島の飼っている猫でも、放し飼い猫というのがたくさんいるわけです。名瀬の町中にいるようなネコは、山まで行っている可能性というのは少ないと思うんですけれども。奄美大島は中央部に山がたくさんあって、集落というのは本当に海と山の間に、小さなところに点在するようなかたちであると思うので。そういった山裾の集落なんかでは、飼い猫であっても、室内飼育していなければ山に通っている可能性だってありますし、飼い猫だけじゃなくて、その地域の野良猫が山に行っている可能性もあります。 そうすれば食べるつもりはないかもしれないけども、たまたまクロウサギにあったら襲ってしまうかもしれないし、お腹が減っていれば食べてしまうかもしれないというような可能性もあると思うんです。ですから今、ノネコ、野良猫、飼い猫という3つに分けて対策を取るというのが主流というか、考え方としてあると思うんですけれども。 山間部に近いような集落では、ノネコ、野良猫というのは一つとして考えて、飼い猫とそうじゃないネコ、飼い主がいないネコという2つに分けて、きちんと対策を取っていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。星野:ありがとうございました。山の中にいるノネコについて環境省でいろいろ調べて、分布分析をしたり、生息数の推定をしてというお話。それから山に近い集落では、飼い猫も地域にいる野良猫も山に入って希少種を食べている可能性がある。その点については詳しい調査されていないんですね。分からないんだけども、そういう可能性があるので、そういう山裾の集落では、野良猫も山に入っている可能性を前提に管理を考えなくてはいけないのではないかというご意見でした。 それではちょっと視点を変えて、久保君に聞きます。久保君は生物部でいろんな生き物のことを調べてい

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