- 28 -動とみなしていることは、われわれ人間側の視点であって、ネコの言い分からすれば決してそうとはいえないのではないか。そういうことが言えるのです。 そして3つ目の視点です。野生生物の視点からはどうなのかと言うと、野生生物にしてみたら、何十億年かけて生き延びてきたわけです。地殻変動を繰り返しながら非常に長い間、生き物たちはその土地に生きてきたのであって、動植物と人間はともに暮らしてきたのです。そういう野生生物からすれば、ネコは、なんだか突然やってきた外来種、エイリアンがやってきたというふうなこととして考えられるのではないでしょうか。 そして、ここまで確認してきた三つの視点をつなげる視点に時間を導入したいと思います。下に時間と書いてあるのは、この同じ土地で数千年、数千万年、あるいは数億年という時間軸で考えた場合、ここにはおそらく長らく人とネコと、そして野生生物が生きてきたのだと思います。この3者の関係がどういう関係で関わってきたのかを考えると、歴史をさかのぼっていくとたぶん随分と変わってきたといえるのではないかと思います。特に最近の変化が激しいということが言えるのではないか。 これらのことを文字にしますと、人、ネコ、野生30©MIYU2015 KAGOSHIMA UNIVERSITY YUKO OGURI生物、時間という視点で出てきますけども、ノネコ問題というのは人の問題であります。そして、価値観が多様なので、まずは問題を共有できる物差しを作っていくということが必要になるのではないか。また、固有な空間で続いてきた人、ネコ、野生生物の新たな関わりというものをどう作っていくのかということが、今問われているのではないか。そして、それを解決できるのは、唯一、今この時代に、この奄美に暮らしている人々であるということが、一番大事な核心かなというふうに思います。 そして、これからどうするのか。人、ネコ、野生生物の関係修復ですけども、今確実に分かっていることとしたら、希少動植物が少なくとも捕食されているということがいえます。ただ、2点目としては、実はノネコ問題というのは、よく分からないことが多いということです。そうすると、これからはここにあるような手法が考えられるかなと思います。 縦軸の一方には、緊急事態に対応できるような外科的な手術といった手法が必要でしょう。でもそれだけでは足りずに、実際は暮らし、つまりは、考え方や生活様式といったものを変えていくような漢方療法的な手法も必要になるでしょう。さらには条例だとか、行政による大胆な行動が必要ですし、その22©NENE2015 KAGOSHIMA UNIVERSITY YUKO OGURI22©IBUKI2015 KAGOSHIMA UNIVERSITY YUKO OGURI33++++3++©RIRA2015 KAGOSHIMA UNIVERSITY YUKO OGURI
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