平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 17 -りません。実行可能性の評価を終えた後、駆除が適切な処理法ではないということがわかったら、他の方法をもとめなくてはなりません。その一つは囲い込みです。画面の右上のほうに例を示しています。2年前に南米でこの仕事に関わりましたが、この島の町の周囲に侵略的な木が植えられておりました。この木は地元の人にとっては価値のあるものでした。というのも彼らは材木用に用いていたので、この木を駆除するのは適切でないと考えました。代わりに、この島の右側のところに赤い線で囲ったところがありますが、そこに囲い込みをしました。 もう一つの代替案は、局所的な管理で、対象となる種を島全体から取り除く代わりに、優先的に駆除する地区を選択するという方法です。アマミノクロウサギやカエル、あるいはトゲネズミなどの希少種の生育地となっている場所があるかと思います。しかしながら、この方法には不利益な点があります。すなわち、いつも、もっと多くのネコが外から管理区域に戻るので管理を永久にやり続けなくてはなりません。 そしてもう一つの代替案は捕食動物から在来生物が避難できる場所を確保するということです。これはモーリシャス島の成功事例ですが、外来種のサルが絶滅の危機に瀕していたたくさんの種の鳥を餌食としていました。ここに日本の杉を植えることで鳥にとっての新しい生息域ができ、サルからの捕食がかなり減ったという例です。 奄美の絶滅危惧在来野生種の命を奪っているのは、もちろんノネコだけではなくノイヌもいるわけで、このことも考慮しなければいけません。一つの可能性として、ニュージーランドで良く使われている方法ですが、ペットの犬にキウイを避けるように仕向けるという方法です。キウイは在来の希少種で、イヌの捕食攻撃を受けやすい動物です。そのキウイをイヌが食べないようにするために、キウイの匂いを含ませたものを作っておいて、もしイヌが近づこうとすると、そのイヌに対してあまり好ましくない刺激と連想させます。すると野生の環境ではイヌは本物のキウイとの接触を避けるようになります。 奄美大島で問題となるもう一つの種はクマネズミです。これもネコがいなくなると数が増える可能性があります。この対策としてはクマネズミが出てきそうなところに罠を仕掛けて制御することです。最後に、ネコを除去することによりマングースの数が増える可能性があります。それを考慮すると、ノネコの管理を始めるのは、最後のマングースを除去するまで待つというのも良い考えかもしれません。 我々の到達目標について考えることが重要です。目的はただ単にノネコを駆除するということではなくて、奄美大島本来の希少で貴重な動植物層を絶滅しないように守り、奄美の生態系の機能を健康な状態に回復させることです。そして、もっとも大切なことは、奄美大島の島民の皆さまの社会的、経済的な暮らしの豊かさを向上させることにあると思います。•–2••––16•••17•–?–?•–?•–?18

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