平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 15 -大きさとしては一番大きいということです。 アセンション島が奄美と似ている点は、そこに住んでいる人の多くがペットとしてネコを飼っていて、飼い猫を手放したくないと思っていることです。そこでは飼い猫を飼うことはできますが、避妊・去勢が義務であるという地元の規制が決りました。 ほとんどの人たちがこの新しい規則を守りましたが、たった一人だけ隠れてネコを繁殖させ続けた人がおりました。 これを見て分かりますように、地域社会の人たちがどれだけきちんと関わるかというのが非常に大切だということの良い例です。というのも、地域の方々の指示がない限りは、駆除の努力は失敗するというリスクは大きいままで残ってしまいます。 ただ、こういったアセンション島内に人々が住んでいるということは、駆除と言うことを考える際に有利な条件も含んでおります。と言いますのも、アセンション島の駆除チームは、道路、街、店などの施設やインフラが整備されているので、必要なものを購入もできるからです。そのため、アセンション島でのネコの駆除を非常に短期間で効果的に行うことができました。 ただ、アセンション島の経験から学んだ教訓もありました。次回機会があれば別のやり方をするであろうという戒めです。その一つは、駆除が完了した後に、駆除プロジェクトの要員として島内の人々に雇用機会が出なかったということについて、不満をもたらした人も出ました。駆除の仕事は島外の人々が特別に来島して行ったからです。 ですから、駆除作業にできるだけたくさんの地元の人を活用することが非常に大切です。これは駆除の計画の段階から実行の段階、そして結果のモニタリングの段階まで、すべての段階を含みます。また、地元に対しての経済的、社会的な投資としてインフラを整備したり、雇用を創出したりエコツーリズムの機会を進めることが重要です。 次に、駆除をする前に考慮すべきリスクや課題があります。これは奄美にも当てはまる例かと思いますが中位捕食動物の問題です。すなわち、ある捕食者を取り除くことによって、より大きさの小さい捕食動物の数がもっと増えてしまい、広がってしまい、もともとの被害よりも大きな被害をもたらすということです。 一つの例として、ニュージーランドの私の同僚のマット・ライナー氏の論文の中のグラフを紹介します。ニュージーランドのリトルバリア島でネコを駆除しました。このグラフにありますけれども、ここでネコを駆除したあと、ヒメシロハラミズナギドリという希少種の繁殖成功率は実は落ちてしまいました。これは、ネコが駆除された結果、ネズミの数が増えていってしまったからです。ネコよりネズミのほうが鳥の捕食動物としてはより強力だったからです。その結果、ネズミも島から駆除しました。グラフの右端をご覧になると、ネズミが駆除されてからのこの鳥の繁殖率は格段にあがったことがわかりま•4(> 100 km2):•1000•3(1080)Ascension (101 km2)Tristan da Cunha (114 km2)Macquarie (129 km2)Marion (293 km2)1011••••12

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