平成27年度「奄美の明日を考える奄美国際ノネコ・シンポジウム」
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- 14 -かの島嶼においては、他の島ではまだ生き延びていますが、地元で絶滅してしまった希少種を再び導入することに成功したという例があります。スライドの下に写真があります。これはオーストラリアの島ですが、ノネコが島から駆除された結果、絶滅の危機にある有袋動物が野生に戻ったという例です。 そしてまた、何十年もの間、見られなくなってしまっていた鳥類がこれらの島に戻ってきて、再び繁殖し始めるという状況が、ノネコがいなくなって、ほんの2~3年たって見られるようになりました。 次に、ノネコ駆除後の社会面、経済面での成果ということについて述べます。まずもっとも顕著なものが、エコツーリズムの恩恵です。特に奄美大島がもし世界自然遺産に登録されたときには、このエコツーリズムというのは非常に大きな影響をもたらします。 また、駆除のもう一つの利点は、駆除作業をすることによって、地域住民への雇用機会を創出していくということがあります。この写真は、メキシコにおける駆除の様子です。これはヤギを島から駆除するために地元の人をハンターとして雇っています。このようにして地元の人にとっては、とても価値のある雇用創出源になっています。この奄美でも同じような例があります。現在40名くらいのマングースバスターズの方が働いていらっしゃるのを見させていただきました。 そして、最後のポイントですが、ネコは有害となる病気を野生動物や家畜、そして場合によっては人間にも感染してしまうことがあります。最適な例がトキソプラズマ症です。これは野生動物、人々に感染するものですが、ノネコがいなければこういった病気は存在しないわけですから、ネコの駆除はこの病気を完全に取り除くことになります。 次に、人が住んでいる比較的大きな面積の島におけるネコ駆除についてお話します。世界中で、人が住んでいる比較的大きな島でネコの駆除がなされたのは4つの島々です。この地図にありますが、大西洋にあるアセンション島とトリスタン・ダ・クーニャ諸島、先ほどすでにお話をしましたインド洋にあるマリオン島、そして南氷洋のオーストラリアの領海にあるマッコーリー島です。これらの島々は4つとも全て面積が100平方キロメートル以上で人口が1,000人前後の島です。 この4つの中の3つの島々では、罠、銃、毒物使用等の手法の組み合わせを用いてネコの駆除をしました。残念ながらこの4番目のトリスタン・ダ・クーニャ諸島では、1970年代半ばの何年も前に駆除を行っており、当時の駆除手法に関する情報の記録がないため、どのような方法で駆除したかは分かりません。 この中でアセンション島におけるネコの駆除についてお話します。このアセンション島というのが、今までお話しした島々の中では一番奄美に近いものだと思っています。面積的にも一番大きな島でありますし、人口も1,000人近くいるということでは、•1925(293 km2)7•••8•••9

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