平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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6 第Ⅱ章 環境文化把握調査 「奄美大島の人と自然のかかわり」 -シマ(集落)の資源利用調査から- 中山清美(奄美市立奄美博物館館長) 1.はじめに 全国的に縄文人の資源利用の在り方は、四季に対応して利用可能な野生動植物をまんべんなく、かつ、効率よく利用しているのが特徴とされている。奄美大島も「奄美・琉球」の自然遺産登録に向けた生物多様性などの調査と新学術領域における環境と文明における総合調査「環太平洋環境文明史」など琉球弧が世界を視野に入れた調査で注目される。本論ではそのようなグローバル的な視点で地域に学び、地域の皆さんが畏れ、敬い、守り、残し、伝えたい「シマ(集落)遺産」を基軸とした資料などから奄美の自然感を環境考古学的な視点で試みる。 これまで奄美群島における最近の野生植物等の食用植物等については田畑満大の永年の地道な研究成果がある。今回、共同調査員として岡野隆宏、田畑満大、泉和子、永江直志とともに龍郷町秋名・幾里集落、奄美市住用町西仲間集落のシマ(集落)遺産調査を行い、2012年に田畑満大と一緒に調査を行った奄美市笠利町赤木名地区における植物利用を加え、今後の資料を追加していく過程を述べたい。 これまで奄美大島における栽培植物の調査は赤木名城の調査が1999年から2002年まで行われ、遺跡の遺構や層位的にはっきりしている遺物の入っている土構から土壌を採集し、フローテーション(水洗洗浄)法による種子等の分析、分類を高宮広土(札幌大学教授)が行った結果、イネ188(粒、片)が検出された。 それを期に赤木名城を営んでいた人たちがどのようなものを食していたのか足元のシマ(集落)を調べることから始まり、集落から周辺の山に至るソテツバテ(ソテツ畑)などの分布までシマの里山的な利用まで少しずつ明らかになってきた。さらに調査は土地利用の在り方などから自然を食していた島人がどのようなものを利用していたのか自然との生業に関する聞き書き調査などへ視点が拡大している。

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