平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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1 第Ⅰ章 調査方針及び調査方法 1.調査方針 「環境文化型」の国立公園あるいは世界自然遺産を目指す場合、島の人々の積極的な理解と参加が必要となる。具体的には、地域で営まれてきた日常の生活の積み重ねを環境文化という視点で再認識して、その継承について地域で議論し、対外的に発信が可能なものについて国立公園及び世界遺産のコンテンツとして発信してくことが望まれる。また、このような取組が地域で行われ、継続されることが求められる。 以上の点を踏まえ、今回の業務では以下の基本方針で進めた。 1)地域の方が主役となるよう調査を行う 環境文化の把握は、地域の人が自らの感覚で地域を見直すことが重要である。このため、五感を使ったワークショップ、地域の方による地域の聞き取り調査など、地域の方が主役になるような手法を用いて環境文化の把握を行った。西仲間においては、「市民調査と聞き書き」の勉強会を開催した。 世界遺産効果として観光に伴う経済効果が期待されるが、地域が利益を得ていくためにも地域が主体的、自律的に取り組むことが必要となる。具体的には地域で捉え直した価値の中で、対外的に公開せずに大切にしていくものと対外的に発信すべきものを地域で議論して決定した上で、地域の手によって商品化していくことが望まれる。このため、地域主体の観光プログラムづくりに取組むNPOと連携した調査を行い、報告会では世界遺産登録後の観光プログラムづくりについて議論した。 2)既存の研究と地域の取組と連携し、地域に調査ノウハウを蓄積する 奄美群島では「文化財総合的把握モデル事業」(文化庁)から生まれた「奄美遺産」の取組が進められている。従来の文化財の枠組みを超えて、地域が大切にしてきたものを把握・保存・活用しようとする試みである。この取り組みは奄美群島各地で進められており、「環境文化」として捉えうるものが多く把握されている。 本調査はこの取組の成果を踏まえて行うことが適当である。鹿児島大学ではこれまでに構築してきた地域でのネットワークを活用し、奄美遺産の実施主体と連携して取り組んだ。また、大学の専門家が関わることで、「奄美遺産」の取組が活性化することが期待され、連携によって生まれた調査ノウハウが「奄美遺産」の取組に蓄積されることで、環境文化の見直しと把握が地域で継続されることが期待できる。 3)社会科学と自然科学と融合を図る 「環境文化」を把握し意味づけていくためには社会科学と自然科学の両分野の融合が必要である。鹿児島大学は法文学部、理学部、水産学部などの学部を有する総合大学であり、両分野による融合による調査研究が可能である。 本調査においては、社会科学分野の専門家がヒアリング調査、自然科学分野の専門家が自然資源概況調査と分担して行うのではなく、双方の専門家が互いの調査に参加・協力することとした。 さらに、これまでに構築した研究者のネットワークを活かし東京大学他の研究者の協力も得て調査を実施した。

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