平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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23 2.ケンムンの分布域 奄美群島に棲むと言われているケンムンについて色々な視点から捉えてみることにする。これまでの聴き取り調査によってカッパ伝承は九州以北で山や川に生息している。ケンムンは奄美大島と徳之島に棲んでおり山、川、海を中心に生息しています。喜界島においては「ガワラ」とも呼ばれているが奄美大島ほど多くの伝承は聞かれない。もともと居なかったのか、あるいはすでに絶滅したのか不明である。沖永良部島のケンムンは「ヒィーヌムン」と呼んでおり、山に生息しており、海で見かけた話はあまり聞かないという。与論島のケンムンは「ハタパギマンジャイ」(片足で跳ねること)、「イシャト」(海で見るケンムン)と言われており、ケンムンとは呼ばないし、少し違うという。沖縄本島では一般的にキジムナーと呼ばれ、地域によって呼称も違うが、ケンムンと共通している。これらのケンムンの生息域には多少の推移が伺え、山の木につく精霊から海へと推移する過程で山、海に生息している地域から別々の名前に分かれていることも明らかになった。また共通する特徴に体形が1m前後と小柄であり、座ると足が長く、魚の目玉を好み、タコが嫌いであることなどが聴き取り調査から明らかになっている。これまでの調査から奄美大島のケンムンは大和のカッパの影響を強く受けており、奄美大島と徳之島に多く、喜界島に少ないことがわかる。両島とも山や海を生活基盤としていることなどから大和のカッパの生息域場所とは少し違いが見られる。 島人が畏れる「ケンムン」と「アムロウナグ」アムロウナグの沐浴シーンなど美しい女性に化けています。島人は女性の裸を覗いたりしません。覗くと目ん玉がとれ、医者に行っても治らないと言われています。後ろの絵もソッポを向いて歩いています。(恵原義盛「奄美のけんもん」より) 図1 ケンムンの分布域図

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