平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
225/231

221 もとめられるエコツアーガイドの質 以上述べたように、自然や文化の質や脆弱性に応じて地域を区分し、利用する人数やプログラムを変えることで、持続的で波及効果が大きい観光が実現できるのではないかと考えている。 2)シマ歩きとシマガイド 奄美群島には自然を畏れ敬いながら、うまく利用してきた「環境文化」が色濃く生きている。直接的に自然を見ることに加え、このような地域の文化を通して自然を感じることは、多くの観光客にとっては魅力的な体験であり、自然とのつきあい方を考えるきっかけともなる。そんな体験の場所として最適なのがシマである。 自らが暮らしてきたシマを案内するガイドを「シマガイド」と呼びたい。眼に映る風景は時間の積み重ねでできている。それは、地層のように外からは見えないけれど、確かに今につながっている。ここで暮らし、時間を共有されてこられたシマガイドの案内でシマを歩くと、風景の見え方が変わってくる。 西仲間集落で実施されているシマ歩きに参加した。 「この川でエビや魚をつかまえて、美味しくたべていました。いまは、だいぶ少なくなってしまったけど。」 「この泉は大切な水場。天秤棒で水を運ぶのが子どもの仕事でした。水道ができて、水場としては使わなくなったけれど、豪雨災害で水道がとまったときに生命を支えてくれたのはこの泉でした。」 私たちの暮らしは便利になった。しかし、いざという時に生きてくるのは不便だったころの暮らしの経験なのかもしれない。身近な自然をうまく使うことが安心の支えになる。シマガイドの話を聞いて、そんな経験や場所を引き継いでいくことが大切なのだと思う。 シマガイド

元のページ  ../index.html#225

このブックを見る