平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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217 4.地域を見つめなおすこと-「聞き書き」のすすめ- 世界遺産を地域づくりに活かすために、まず重要なのは地域が自らの手で地域を見直すことである。今回の調査では二つの集落で聞き取り調査を行い、地域を見つめ直す機会づくりに取り組んだ。最初は「シマには何もない」と仰っていたおばあちゃんが、五感をたよりに思い出話を聞いていくと、次から次に豊かな自然とのふれあいのお話をして下さり、最後には「シマは宝だらけだね」という言葉まで出た。地域を見つめ直すことで、地域の価値が再認識され、誇りとなったのだ。 今回は五感の記憶をたどるという手法で、地域の宝を引き出した。これは、日常の感覚による地域資源の見直しを意図したためである。また、懇談会という形をとって、複数人数で思い出話に花を咲かせる手法を用いた。お互いの記憶がふれあって、思いがけないことまで話が及ぶ。これらの言葉を集め、地図に落として行くことで、シマの空間の中で、日常的に大切にしている、あるいは思い入れのある部分を照らし出すことできる。この方法は非常に楽しく取り組める手法であるが、話が盛り上がると複数が語り出すために記録がうまくとれない、話が次々に展開するため細かい点が確認できないといった欠点も有する。このために、個別にじっくりと話を聞くことが次に必要となる。 地域を見つめなおす有効な手法に「聞き書き」がある。「聞き書き」は話を聞いて記録する作業である。聞き書きの手引き書として『聞くこと・記録すること-「聞き書き」という手法-』(製作:SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ事務局・国連大学高等研究所、製作協力:特定非営利活動法人 共存の森ネットワーク・環境省)が発行されている。 この手引き書では、聞き書きの効用として「人と人をつなぐ」、「世代と世代をつなぐ」、「人と自然をつなぐ」と述べている。 この手引き書は以下のアドレスからダウンロード出来る。 http://www.unesco-school.jp/?action=common_download_main&upload_id=5766

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