平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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212 世界に類を見ない固有種・希少種が生息・生育する亜熱帯照葉樹林を中心とする生態系とそれが醸し出す景観を保全するためには、生態系全体の管理手法にまで踏み込んでいく必要があるとしている。このことは奄美遺産の考え方と方向性が同じであり、世界自然遺産を地元で活用する施策にもつながっていく。群島民が世界自然遺産を目指すことを主目的とするのではなく、群島民は「奄美遺産」を確立し、奄美遺産が世界自然遺産になってしまったというケンムンの視点が必要と考えた。構想は文化財に携わる団体や関係者だけでなく、12市町村で構成される奄美群島全体で広域的な取り組みが求められる。自分たちには何が出来るのかということからいくつかの取り組みが試行錯誤され動き出している。 奄美地域の森や川、海浜などの自然資源は、伝統的な人々の暮らしや営みなどの文化と深い関わりを持っており、ケンムン伝説も多い場所である。その関わりが、現在の自然資源の姿を形作ってきた。 9.文化遺産マネジメントと今後の課題 文化資源をマネジメントするという視点は行政が取り組みにくい部分や地域住民ができない部分を補う必要性が生じているためである。 奄美のシマ(集落)の人々が畏れ、敬い、守り、残し、伝えたい大切な「宝」を文化観光や地域振興に積極的に活かすことは田舎であればあるからこそできると考える。どこの地域も田舎は環境循環型でこれまで当たり前のように生活してきた。大都会が先に先に進み過ぎて、あの大震災から真剣に考えるようになってきている。そのことは多くの国民が気づき指摘するところであり、自分たちの足元を見直すところに来ているとも言われている。言い換えれば「私たちのシマには何もないよ」と言ったお年寄りの言葉の裏にはたくさんの宝が埋まっている。

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