平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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193 (表12)屋久杉自然館その他の販売物 これらから屋久杉自然館が、徹底して屋久杉にこだわっていることがわかる。そのこだわりは、開館以来、学芸員を20年以上務める町の職員M氏と博物館活動を支える館長の存在が決定的に大きい。そこで屋久杉自然館の運営や活動の特徴をM氏の言動を中心に見ていく。 M氏は、小杉谷集落の隣り、石塚集落出身で林学を専攻したUターン者だ。屋久島自然館が開館する時期に島に戻り役場に入った。開館準備当初、M氏は旧上屋久町立歴史民俗資料館によく通い勉強している。そこで学んだことは、とにかく資料を一杯集めることだった。昨日の資料もいつか貴重な資料になるという考えで、チラシから何から全部集めることを心掛けた。ほとんど読んだことのない資料が多いが、自分の代は集めるだけでいいと割り切る。また、当時も世界自然遺産ということは言われていたが、M氏はそのことよりも屋久島のために、いつか必ず町民が必要とする時が来るという思いで資料をかき集めたと述懐する。 M氏はそれだけでなく、開館3年目にして館長と二人で日本全国の杉の産地を二年かけて百日近く回っている。屋久杉自然館は、屋久杉を通して森と人を紹介する場だが、杉を知らなければ屋久杉は語れない、というのが行動の原動力だ。人から受け取った情報を流しているだけでは説得力に欠け、深みのある展示はできないと断じる。自らフィールドに出て、本物を知ることを重んじる。ただし、自然と歴史は違うと強調する。自然は、例えば植生のように、現場と読み物があれば博物館で展示しなくても分かる。それに対して歴史は積み上げが必要で、資料がないと語れない。屋久杉自然館では、平成21年度の事業で、島内の調査がひと段落したことを受けて南九州市知覧町に赴き「小杉谷・石塚聞き取り調査」を行っている。これは、昭和30年代当時、小杉谷集落には、種子島や南九州市知覧町のほか、高知県、熊本県、大分県、宮崎県などの出身者で人口の半数を占めるほどの時代があったからだ。 屋久杉自然館は案内活動を行っているが、来館者から質問を受けて知らないことがあることは恥ずかしいという感覚で運営している。たとえば、「宮之浦岳ってしんどいですか」と聞かれれば、昔はともかく、今の自分はどうかを考える。そういう機会が折り重なり、島のことをあまり分かっていないことに気づく。自分は実は島内のことをよく知る人のことを知らず、交流が少ないこともわかってくる。M氏の学芸活動や案内活動への姿勢は、業務委託職員にも徹底されている。そのことは、職員を高く評価するM氏の自信にも伺える。 屋久杉自然館の事業には、特別展以外の展示のミニコーナーや、併設のクラフト教室で開催する木工教室なども提供する。平成15年を例に挙げると(表13)のとおりである。 ポスター、はがき等発行縄文杉ポスター 大屋久町立屋久杉自然館縄文杉ポスター 小屋久町立屋久杉自然館縄文杉・夫婦杉ポスターカード(2枚)屋久町立屋久杉自然館オリジナル絵はがき10枚組屋久町立屋久杉自然館メッセージカード(2種)屋久町立屋久杉自然館CD 山に響け!屋久町立屋久杉自然館DVD 屋久島~自然とくらし~屋久町立屋久杉自然館ミュージアムグッズ屋久杉自然館のクラフト室で制作した木の工芸品各種オリジナルクッキー

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