190 り大きな問題は、予算が減少する一方で、事業数は全体として増加傾向にあることだろう。一つ一つの事業にかける時間やマンパワーの縮小にもかかわらず、質の高い環境学習をささえる条件が担保されるかは疑問だ。環境学習の量と質のバランスを勘案しつつ、事業の整理統合、焦点化が必要な時期に差し掛かっているのだろう。ハード整備とスタッフの確保は、環境教育の条件整備の観点でいえば一番の基本で、求められるスタッフ像を描きつつ、限られた資源で最大の効果を得られる体制の再考が求められる。そのためにも、今一度、屋久島環境文化村の理念に立ち戻って目的達成に必要なことがらを洗い出すことが必要だろう。 4.屋久島町立屋久杉自然館について 屋久島町屋久杉自然館は、昭和61年に旧屋久町の町制施行30周年記念事業として提案された屋久杉博物館建設構想に由来する。本構想は、自然を生かした地域振興をはかる長期振興計画のなかに「屋久杉の里」事業として位置づけられ、昭和62年に地域総合整備債によって建設が決定された。昭和63年に工事発注、平成元年に公募で名称が「屋久杉自然館」に決定し、同年10月に本館が開館した。 (1)施設概要 (表8)旧屋久町立屋久杉自然館概要 旧屋久町立屋久杉自然館(現屋久島町立屋久杉自然館) ・所在地 鹿児島県屋久島町安房2739-343 ・建設面積 1,180.64㎡ 延床面積1,723.25㎡ ・構造等 屋久杉造及び鉄筋コンクリート造2F ・建設総額 8億6千万円(造園、園路整備等含む) ・主要施設 本館(コンクリート円柱構造の2つの展示棟とそれを結ぶ屋久杉の木造)、別館(平成7年4月開館) (平成25年度屋久杉自然館運営の概要より) 開館目的は、以下に記すとおりである。 ・学術的機能を基に屋久杉を中心とした屋久島の自然、そして郷土の先人 泊如竹をてがかりとした屋久杉利用の歴史的変遷について展示を行い、観光にも結びつく博物館 ・教育的機能を有する郷土博物館 屋久杉自然館を所管する部署は、建設当初より教育委員会ではなく町長部局である。開館当初は企画課が所管していたが、その後は商工観光課に移り、観光施設としての位置付けを貫いている。屋久杉自然館の管理運営費も商工観光課の科目として計上されており、ここ10数年人件費を除いて4千万円弱で推移する。屋久杉自然館では、入館料(町民は無料)のほか、木工教室等の参加料、書籍やポスターなど物品販売費などで等で、年間3千万円弱の収入を自前で稼いでいる。 開館当初からの入館者数は(図4)に示す。屋久島への入込者数の減少にかかわらず、コンスタントに3万から4万人の間で入館者数を維持しているのがわかる。
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