平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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189 有料入館者数とは、環境文化村センターに入館した者のうち有料映像を観覧した人の数を示す 無料入館者数とは、センターに入館した者のうち有料映像を観覧しなかった人の数を示す (屋久島環境文化村財団提供資料より) 屋久島環境文化財団の仕事には、大きく施設内部と施設外部の仕事に整理できると関係者は語る。後者の課題が、たとえば地元との関係構築や縄文杉周辺のマナーの問題にあるのに対して、前者は施設利用者を増やすことだったという。環境学習中核施設としての使命遂行と施設を維持することのバランスが、年を追うごとに難しくなる傾向がみてとれる。開館当初は、環境文化村の理念を中心に事業の意味や内容を関係者が喧々諤々議論していたと聞く。一方、ルーティン化していく事業が増える過程で、環境文化村の理念に基づき事業の意味や内容を問う勇気と力が発揮しづらくなる傾向があるようだ。 (4)小括 【視座1】から屋久島環境文化財団とその職員が運営管理する環境学習中核施設(屋久島環境文化村センター、および、屋久島環境文化研修センター)をみると、両施設の力点は、「島の外の人(島外者)にとっての環境学習」に置かれてきたことが入館者や利用者数から推測される。また、関係者や地元の方へのヒアリングでも、両施設が地元から疎遠な存在になっている。【視座1-1】に照らしてみた場合、財団とその両施設が、島外者と島の人をつなぐ機能を果たせているかという点と、屋久島の「環境文化」の追体験のコンテンツが開発出来ているかがポイントとなる。財団職員と地元関係者に行ったヒアリングでは、観光客と島民が交流する機会はほとんどないというものだった。「環境文化」の追体験という点では、今回集めた資料だけではにわかに判断できないが、出版物の発行傾向や構造化に向かっていない環境学習事業、他の関係施設との連携が密とはいえない状況では、到達できているとはいえないだろう。【視座1-2】についても、島民との接点が今一つの財団の活動から肯定的な結論を導き出すことはできない。ただし、平成22年にはじまる「里のエコツアー」は、島民と島外者の交流を促し、集落の環境文化を見つめ直す動きとして大事な試みだろう。 【視座2】は、環境文化のコンテンツづくりの主体が正直見えない。両施設から情報発信する場合でも環境学習プログラムを提供する場合でも、コンテンツづくりは不可欠だがその試みがみえない。誰がコンテンツ開発に不可避な調査研究を束ねるのか。過去に作成した屋久島ガイドブックは一つの試みだろうが、そこに自然と人の関わりを色濃く入れていくためには、研究者ネットワークの活用や島の過去を知る長老や地元の方の参加がもっとあってよい。仮に研修センターを中心にした場合、運営を任されているのは県教委の出向教員で滞在年数は3年程度だ。しかも、島出身者ではない場合が大半で、こなすべき事業も山積する。まずはコンテンツづくりの時間や資源などが十分に確保される環境醸成が課題だろう。 最後に、検証の第二の視点である環境教育の条件整備では、ハード整備や仕組みという観点でいえば、環境学習をささえる条件は初期の段階でずいぶん前進している。一方、財団の運営管理費が、平成18年に導入された指定管理者制度が象徴するように、職員数を含めて減少傾向にある。財政という面では過去に比べて後退していると指摘せざるを得ないが、よ

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