平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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177 5.ガイドの地域貢献と地域との距離 改めて、縄文杉の入山者数をみると2003年頃、すなわち世界遺産登録の10年後から急増している。ガイドの数も同時期に増加していることがわかる(図9)。往復10時間を要する縄文杉まで道のりは、観光コースとしては一般的ではない。しかし、ガイドシステムが整備されたことにより、一定の装備さえ整えておけばたどり着くことが出来るようになり「商品化」された。これによって、パックツアーの中でオプションツアーとして取り扱われることとなり、入山者の増加につながったと考えられる。 また、ガイドの解説による楽しみや学びも、リピーターを惹きつける大きな要素である。登山道沿いのごみがほとんど見られなくなったのもガイドによる呼びかけかけや監視の効果が大きい。加えて、行き帰りも同じルートを通る縄文杉ルートで、800人ぐらいまでならばスムーズに上り下りできるのは、ガイドがトランシーバーとでうまく連絡をとりあいながら調整しているためである。 縄文杉の商品化は、ガイド以外にも経済的効果をもたらしている。往復10時間歩くために必然的に前泊と後泊の2泊が必要となり、島内での宿泊数が増える。宿泊施設と宿泊定員が大きく増加するのも10年前ごろからである。登山用具のレンタルがビジネスとして成立しているのも屋久島の特徴である。 図9 ガイドシステムの整備と入山者数の推移 このようにみてみると、屋久島の観光の発展は、世界遺産登録によってのみもたらされたのではなく、世界遺産にふさわしい縄文杉登山という「商品」が作られたことによってもたらされたと捉えられる。その意味ではガイドは屋久島観光の最大の功労者である。 しかしながら、地域住民や行政から、ガイドに対する厳しい意見を聞くことも少なくない。 「地域の資源で飯を喰っているのに、地域に何も貢献しない。」 「よそからきて地域になじまない。」

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