平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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146 屋敷における樹木利用 -秋名・幾里及び西仲間の集落調査から- 田畑満大(奄美市文化財保護審議委員) 1.はじめに 奄美大島では、夏の暑さ対策として、台風などの防風のため、あるいは景観鑑賞のために屋敷林を大切にしてきました。屋敷林は木陰や涼しい風をもたらしてくれます。最近はクーラがあるので部屋の中だけは涼しいですが、一歩外に出れば直射日光をまともに受けます。また、建築も台風対策を考え、屋敷林を必要としなくなったようで、だんだんとその姿が消えつつあります。最近、景観としての庭づくりに変わってきています。 2.屋敷林の効用 古い時代、屋敷林として、ガジュマルがあり、夏には、木の上で遊ぶ声が聞こえ、その幸せ感が感じられます。たとえば、同じ位の高さの枝に横木を渡し縛り付け、土台を作り使い古しの筵をしき、昼寝、読書、友達同士の会話、子供達の遊び場になっていました。子供達は、頭のつむじ摑みで点数を増やす遊びで枝から枝へ移り、器用な子供は猿の如く飛びまわるのがいました。また、ガジュマルの木にロープをつり下げてブランコ遊びなど木陰をつくる樹木でもあったのです。絶えず野鳥の鳴き声も、人々の心を癒してくれた物です。屋敷林は絶えず見て家屋に触らないように枝の切り落としも必要です。落ち葉は掃きため、堆肥に積んだり焼いたりしました。主に夕方焼くので夏場は蚊がいるので、ハマゴウの枝を切ってきて燃えさかる上に置くと煙と臭いが出て蚊がいなくなります。 最近は、屋敷林を切り、ブロック塀に代わりました。ブロックに切り替わった理由に、ハブ対策です。屋敷林やサンゴ積みの石垣はハブの棲む環境でした。車社会になり、元の道では、車が通れないので、改善したという事、不動産関係で実測されるようになった事など他にも理由があるかもしれません。 3.秋名、幾里集落の屋敷における樹木利用 大きな屋敷林はなくなってしまっています。海の近い秋名・幾里集落はナバイシ(テーブルサンゴ)を積んだ石垣でしたが、昭和40年代ごろブロック塀に変わっていきました。 ブロック塀の上にガジュマルを這わせ誘導し、景觀的にもよく剪定しながらうまく管理されています。ガジュマルだけでなく、オキナワハイネズ、ハリツルマサキなどが使われています。現代風なアレンジです。また、海岸林の背後の屋敷には、アダン、オオハマボウ、アコウ、マサキ、ハマビワ、トベラ、シャリンバイなど海岸に自生樹種がうまく使われています。ウントノチには大きなヒカンザクラとリュウキュウマツがあります。 ○屋敷林の樹種 ☆フクギ、方言名。フクギィ。外来種ですが、「南島雑話」には名前が出ていますので、17~18世紀の頃に入って来たのではと推測されます。代表的な屋敷林です。葉が厚く、密植すれば火事対策になります。大木になり果実が出来るようになると、トタン屋敷などですと、夜中果実が落ちてくると寝る事が出来ないと語る人がいます。

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