平成25年度地域の環境文化に依拠した自然遺産のあり方に関する調査検討業務報告書
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11 調査で明治12年の竿次帳の発見があり、その後の土地台帳と現在の地籍調査における土地利用のあり方が可能となる。土地利用のあり方は地域における農業や林業など自然との生業の視点からも地域の特徴を示す貴重な資料になるため今後、新たな調査作業が加わることになる。 5.里山・里海的概念 環境省の奄美大島調査で植物において南方系と北方系の種が混在して豊富な植物相を有しており、奄美群島を分布の北限とする種が120種あるなど、多くの南方系の種の分布北限となっているとされ、その職種はアマミセイシカ、ウケユリ、アマミエビネ等の固有種などが多いことが特徴とされている。 動物ではアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、オオトラツグミ、ルリカケス、クロイワトカゲモドキ、リュウキュウアユ等の固有種・固有亜種をはじめ、多様な動物相を有し、奄美大島や徳之島ではハブを食物連鎖の頂点とした独特の生態系が形成されている。また、群島の海岸域にはウミガメの産卵地が存在しているほか、奄美大島及びその周辺島嶼には海鳥(アジサシ類、アナドリ類)の集団繁殖地がみられるなど、広域移動性動物の重要な中継地・繁殖地ともなっている。 奄美群島の海域では、裾礁や堡礁などのサンゴ礁が発達している。造礁サンゴの種数は約220種にのぼり、魚類、貝類、甲殻類など多様な生物の生息場所として特有の生態系を形成していることなどが報告されている5。 このような自然環境において人と関わりあいのある動植物、魚介類について聞き取り調査により季節ごとにまとめてみた。このことは奄美大島に旧石器時代に人が住み始め縄文時代相当期から近現代まで狩猟採集活動を行っており採集・狩猟・漁撈という自然との生業の在り方が基盤になっている要素として捉えられる。環境考古学的な視点でも注目される。調査は大島北部に位置する赤木名城において地元植物研究家の田畑満大と自然写真家勝廣光などの協力を頂いて行い、植生調査を基に環境省野生生物保護センターの田中準自然保護官(平成23年度奄美勤務)の助言も頂きながら図1「資源の垂直利用」を作成することができた。 その結果、赤木名城における植生調査からは人との関わりのあるものがデーターで示されているが、何処まで里山なのかはっきりした線引きをすることが出来なかった。しかし、図1のモザイク状の部分を人の手の加わる里山的な捉え方で考えると頻繁ではないが季節による狩猟採集の場所と用材、食物採集として集落単位で深い山から海に至るまで資源の垂直利用が考えられようになった。これには戦後の一時的な畑作利用としての段々畑と、里山的な利用としてソテツの利用も考えられるため今後具体的な調査を重

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