平成24年度「屋久島・小笠原諸島等の島しょ型世界自然遺産をモデルにしたネットワーク構築等業務」報告書
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- 23 - 3.推薦書案の作成 既存の報告書等を基に、ヒアリング、意見交換会、シンポジウム、現地調査結果を追加して「奄美・琉球」の世界自然遺産登録への推薦に向け、推薦書の案を作成した。 推薦区域が定まっておらず、保護地域の設定や管理計画の策定も行われていないため、現時点では不十分な内容にならざるを得ないが、今後の議論を踏まえて充実させていく必要がある。 推薦書に作成に向けて今後議論すべき点を2点挙げる。 ① 森林の利用履歴と今後の管理方針 「奄美・琉球」の亜熱帯性照葉樹林は、日常の煮炊き用の薪や家の建築用材の他に製糖、鰹節や織物生産などにかなりの量の森林が利用されてきた。また、焼き畑なども行われており、原生林と呼べる森林はほとんどない。この点は自然遺産の観点からはマイナスであるが、この森林に多くの遺存固有種が生き残ってきたことは事実であることから、これまでの地域のおける森林の利用についても記述して「共生」のメッセージを伝えることが望まれる。 本業務で作成した推薦書の案には、琉球王国や幕藩体制における森林政策について概略を記述したが、今後は日常生活における利用ルールのなどを調査し、森林の再生力をうまく利用してきたことを主張することが望まれる。また、染色などに様々な植物が使われてきたことを、人と自然の関わりの例として記述することも検討されて良い。 また、森林を今後どのように管理していくかについては明確に記述することが求められると想定されることから、地域連絡会議や科学委員会で十分に議論する必要がある。 ② 保全状況と影響要因 世界遺産の審査に当たっては、将来的に価値が守られることを証明する必要がある。法的な行為規制だけでなく、外来生物などの環境圧力、自然災害、観光圧力に対する対応について十分に記述する必要がある。これまでの対応をレビューするだけでなく、将来的な目標についても明確することが望ましく、地域連絡会議や科学委員会で十分に議論する必要がある。

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