- 21 - 境文化懇談会(島外有識者)、マスタープラン検討委員会(県内学者)、地元研究会(島民)という3つの委員会の設立である。屋久島環境文化懇談会は主として理念を、マスタープラン検討委員会は専門的計画を、地元研究会は地元の立場からの提案をするというのが大きな仕分けだが、実体上は途中経過をそれぞれ報告し合うなど渾然一体として進められた。 こうしてまとまとめられた環境文化村の議論の成果は、次の3点に集約される。 ⅰ 「共生と循環」に代表される理念を打ち出したこと ⅱ 環境文化村センターなどハード施設の整備とソフト運営の財団を設立したこと ⅲ 屋久島方式=地域づくりは100年計画の運動論、であるという新たな提案をしたこと 理念として提起されたのは、「共生」「循環」「参加・交流」「国際」と「環境学習」の5つであった。共生と循環は委員である哲学者梅原猛氏の主張であったが、同時に地元研究会からの提案でもあったことの意味は大きい。翌93年に閣議決定された国の環境保全の基本方針である環境保全長期計画において「共生と循環」がもっとも重要な理念として掲げられたことを思えば、屋久島の議論の先進性がより明確となる。 ② 屋久島にみる世界遺産効果と課題 1993年に世界遺産に登録された屋久島は、この20年間で入込客数が2倍近くに増えている。島内の宿泊施設数は3倍となり宿泊定員も倍増した。自然を案内するガイドも150人を超え、大きな産業へ成長した。その一方で、縄文杉への一極集中が顕著となり、自然環境と利用環境の悪化が懸念されている。また、知名度が向上し、訪れる観光客が増えているにも関わらず農業生産額は減少を続けている。 屋久島は、サンゴが見られる黒潮の海から2000m近くに及ぶ山岳までの多様な自然、岳参り(たけまいり)に代表される自然への畏敬、たんかん....やぽんかん....などの農産物、首折れサバやサバ節などの水産物などの魅力が溢れている。「屋久島環境文化村構想」では、屋久島の溢れる魅力を体験することを通して自然を知り、自然との共生の知恵を学ぶことを提唱している。残念ながら世界遺産によってもたらされた外部からの眼差しは屋久島のごく一部にしか光を当てていない。 ③ 「奄美・琉球」が学ぶべきこと 「奄美・琉球」の世界遺産をどのように活用していくかという点については、環境文化村構想の策定のプロセスに学びながら地域と一緒に議論していくことが望まれる。屋久島で行われたよう、計画の策定過程そのものを事業の一部として進め、島民の幅広い参加で議論を深めて、計画と地域との関係を強固なものする、島内外に議論を拡大する、といった考えは大いに参考にすべき点である。 一方、「環境文化村構想」で描かれたビジョンが十分に実現できていないことが屋久島の課題である。世界遺産という当時影響の予測が難しかった概念の導入によって、対応が後手に回ってしまったことが大きな要因である。その間にガイドなどの観光業が
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