77 2)暫定リストの提出 2006年12 月に開催された第2 回科学委員会において、小笠原諸島は、評価基準の(ⅷ)、(ⅸ)、(ⅹ)に合致する顕著な普遍的価値を有すると整理された。ただし、外来種対策については、その排除について推薦の際に一定の成果を示すとともに、将来的にも世界遺産としての価値を維持出来る見通しをつける必要があり、概ね 3年程度しっかりとした対策を行うことが必要、との見解が示された。また、200 7年1 月に小笠原村で開催された第2 回地域連絡会議において、小笠原諸島を暫定一覧表に記載するための手続きを進めることについて合意がなされた。 これを受け、2007年1 月2 日に開催された世界遺産条約関係省庁連絡会議において、自然遺産として「小笠原諸島」を日本の世界遺産暫定一覧表に記載することを決定し、1 月30日に世界遺産委員会の事務局である世界遺産センターに提出した。 3)管理計画と生態系保全アクションプランの策定 「管理計画」は、小笠原諸島の今後の保全管理について、管理機関である環境省、林野庁、東京都、小笠原村が策定したものである。科学委員会で案の議論を行い、パブリックコメント、地域連絡会議の了承を経て決定された。 さらに、小笠原諸島の抱える最大の課題である外来種問題についての課題解決策として、「生態系保全アクションプラン」を策定した。外来種対策を行う際の具体的な手順と役割分担をまとめたものである。 手順については、種間相互作用に注目し作成されている。例えば、小笠原固有のトンボ類の繁殖地である弟島には、外来種のノブタとウシガエル生息していた。捕獲は大型のノブタが容易であるが、トンボ類を直接捕食するウシガエルをノブタが捕食して個体数の増加を抑えていたことから、まずはウシガエルの捕獲を行い、その後にノブタの捕獲が行われた。また、外来種防除の効果を把握するためのモニタリングについてもアクションプランに位置付けられて実施されている。 管理計画と生態系保全アクションプランは、科学委員会の各委員のこれまでの調査研究の成果の上に策定されたものであり、今後のモニタリングについても各委員が担う部分が大きい。 4)外来種対策の実施 生態系保全アクションプランの役割分担に従って、環境省、林野庁、東京都、小笠原村が外来種対策に取組み、ノヤギ、ノブタ、ウシガエル、ノネズミが地域的に根絶され、アカギやグルーンアノールの防除も飛躍的に進捗した。 これは、暫定リストの提出により3年後に推薦という目標が関係機関で共有され取組が促進されたこと、科学委員会による適切な助言とそれに沿った対策の見直しが随時行われたことによると考えられる。
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