平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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74 第5章 科学的知見に基づく管理体制の構築 1. 地域連絡会議と科学委員会 2011年6月に小笠原諸島が世界遺産に登録され、わが国の世界自然遺産登録地は、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の4カ所となった。 日本には、世界遺産の保全に限定された特別の法制度はなく、自然遺産については、自然環境保全法に基づく原生自然環境保全地域・自然環境保全地域、自然公園法に基づく国立公園、国有林野管理経営規程に基づく森林生態系保護地域といった複数の保護制度に基づき、複数の管理機関が関与して保護管理を行っている。このため、遺産地域を適正かつ円滑に管理するためには、各種保護制度を所管する関係行政機関が相互に緊密な連携を図ることが必要となる。 1993年に白神山地と屋久島が世界遺産に登録される際、その評価の過程で管理体制の改善と管理計画の策定を勧告された。これを受け、両地域に環境省、林野庁、県からなる「世界遺産地域連絡会議」が設置され、各種制度の運用及び各種事業の推進等に関する基本方針を明らかにした「世界遺産地域管理計画」が定められた。その後、地域連絡会議には関係市町村も参加している。 管理計画については、地元説明会や意見募集等を行い、関係者の意見を参考にしつつ策定されている。策定された管理計画に基づき、関係行政機関、関係団体が緊密な連携・協力のもと、巡視の励行、適正な利用の誘導、情報提供・環境教育活動、調査研究・モニタリングなどの実施、拠点施設として「世界遺産センター」、「森林環境保全センター」等の整備などが行われている。 2005年に登録された知床では、世界自然遺産登録に向けて様々な準備が進められた。2003年10月に地域連絡会議を設置し、陸域と海域を含めた統合的な管理計画である「知床世界遺産候補地管理計画」を策定した上で、2004年1月に世界遺産への推薦を行った。ここで特筆すべきは、地域連絡会議の構成機関に、関係行政機関だけでなく、世界自然遺産を目指す地元団体、漁業協同組合、ガイド協会が含まれていることで、より広範な関係者の参加と合意形成とによる保護管理体制が事前に構築された。 2004年7月には、陸域と海域の統合的な保護管理に関して科学的な見地から助言を得ることを目的として、海と陸の生態系の専門家からなる知床世界遺産候補地科学委員会が設置された。この科学委員会がIUCNの現地視察対応や、その後の質問、改善要求への対応に大きな力を発揮した。特に漁業者との調整においては、中立的な立場からの研究者の意見が、合意を得る上で大きな役割を果たした。 知床が世界遺産に登録される際には、世界遺産委員会からいくつかの勧告が出された。この勧告に対する対応では、科学委員会にワーキンググループを設置して議論を重

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