平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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65 2)クライテリア(ⅹ)(生物多様性) 「琉球諸島」は、科学的にも保全の上でも興味深い多様な陸上生物のための重要な生息地であり、その多様な生物のほとんどは絶滅の脅威にさらされている。オキナワトゲネズミ(IUCNレッドリストCR、以下「IUCNレッドリスト」を略)、イリオモテヤマネコ(CR)、ノグチゲラ(CR)、アマミノクロウサギ(EN)、ヤンバルクイナ(EN)、リュウキュウヤマガメ(EN)、イシカワガエル(EN)、ルリカケス(VU)、など、多くのシンボル的な種が、生息地の消失や捕食のために、絶滅が危惧される状態にある。 本報告書で算出した「琉球諸島」の確認種数、固有種数、環境省RL記載種数、IUCNレッドリスト記載種数を表3-26に示す。また、維管束植物と陸産・淡水産・汽水産貝類を加えた奄美諸島の種数等の一覧を表3-27に示す。 特に興味深いのは、「琉球諸島」の両生・爬虫類の種数が日本の他の地域に比べて多く、これらの動物群での固有種率が高いことである。陸生爬虫類では、「琉球諸島」の在来種59種のうち47種が固有種であり、固有種率は約80%と非常に高い割合を示している。また、サワガニの100%、昆虫ではコウチュウでは46.4%、平均でも3割が固有種となっている。 琉球諸島の植物の多様性も、面積が小さいことを考慮すると極めて高く、列島の主要な島群のそれぞれに1,000種以上の顕花植物が生育しており、合計120種が琉球諸島に固有である。琉球諸島は日本の国土の1%にしかならないが、絶滅の危機に瀕した維管束植物の20%を有しており、日本の絶滅に瀕した植物の生育地として、その重要性は傑出している。 このようなことから、琉球諸島はWWFの「地球上の生命を救うためのエコリージョン・グローバル200」やBirdlife International の「Endemic Bird Areas of the World」に選定されている。Birdlife International の「Important Bird Areas」では、絶滅のおそれのある種、生息地が限定されている種の生息地の観点から琉球諸島から8箇所が選定されている。また、Conservation Internationalの「Biodiversity Hotspots」では日本列島をHotspotの1つに選定した中で、特に琉球諸島を絶滅の恐れのある固有種の生息地として評価している。 「琉球諸島」の推薦において、「希少種の重要な生息地」として生物多様性のクライテリア(x)を適用する場合、環境省レッドリスト第3次見直しの成果を2012年9月のIUCNレッドデータブックの改訂に反映させておくことが求められる。

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