平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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60 ⑥ハゼ類(向井,2010) 琉球列島の河川にすむハゼ11種について、分系統学的手法を用いて行われた研究では、九州以北との関係において、トカラギャップにおける系統文化、一部地域におけるmtDNA系統の分布重複、九州以北と琉球列島の間の浅い系統分化、慶良間ギャップにおける系統分化、遺伝的分化のみられない種、の5つパターンが得られた。 九州以北と琉球列島の間でmtDNAがはっきりと分化しているゴマハゼ類、ヨシノボリ類、アベハゼ類、チチブ類について遺伝距離を調べたところ、2つに大別され、参考までに推定された分岐年代は、チチブ類で400万年前、アベハゼ類で180万年前と試算された。 これらの結果から、琉球列島の形成が開始された後に、少なくとも汽水域のハゼ類が九州以北との間で隔離された時期が3度あり(島尻海時代・琉球サンゴ時代・現代)、その間に少なくとも2度(鮮新世後期と最終氷期)、両地域の間で汽水性ハゼ類の移住分散があったという歴史がおぼろげながらみえてきたとしている。

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