平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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56 ②ニホントカゲ種群(疋田,2003) 日本、琉球列島、台湾に分布するトカゲを用いて行われた系統学的研究によると、アオスジトカゲ+イシガキトカゲ+オキナワトカゲ、ニホントカゲ+オカダトカゲ、バーバートカゲに分かれる結果が得られた。ここで重要な点は、トカラ海峡を越えたトカラ列島北部にオキナワトカゲが分布していることと、八重山列島のイシガキトカゲが、台湾のアオスジトカゲより、慶良間海峡を挟んだ中琉球のオキナワトカゲに近縁だったことである。 この結果から、疋田はアオスジトカゲ+イシガキトカゲ+オキナワトカゲの祖先種が海を渡って沖縄・奄美諸島に侵入し、台湾と八重山・宮古諸島との陸橋が失われた後も八重山・宮古諸島から沖縄・奄美諸島への漂流によって海を渡って侵入し、さらにトカラ海峡も渡ってトカラ列島北部にも侵入したと想定している。 更新世に陸橋がトカラギャップまで延びていたとすれば、中琉球の固有性は保てないと想定されることから、中琉球までの陸橋は伸びておらず、中琉球と南琉球に共通の種は狭い海を渡ることのできた少数の種だと想定している。 (疋田,2003)より転載

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