平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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55 (1)近年の分子系統学的研究例 近年は分子系統学的研究が進み、「琉球諸島」の生物相の成立について様々な分類群で議論が行われており、そのいくつかを紹介する。 ①ハブ(Tu et al.,2000) 大陸から台湾、南琉球、北琉球まで分布するハブの仲間について、DNA塩基配列による系統推定を行った結果、ハブ+トカラハブは、サキシマハブ+タイワンハブではなく大陸の内部に分布するナノハナハブとクラスター構成した(Tu et al.,2000)。 これはサキシマハブ+タイワンハブの系統が沖縄・奄美諸島に侵入したのではないことを示しており、ハブ+トカラハブが鮮新世の古い生きのこりであることを強く示唆する(疋田、2003)。 また、これまでしばしば前期更新世(160万年~180万年前)に形成された陸橋を経由して中琉球に到達するとされてきたハブと、南琉球や台湾、大陸に分布する最近縁種との間で得られた遺伝距離からは250万年前~600万年の隔離期間が算出されている(太田,2009)。 なお、奄美大島のハブは沖縄本島のハブよりもトカラハブに近縁であることが分かっており分類の見直し検討されている。 (疋田,2003)より転載

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