平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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53 2.琉球弧の世界遺産として顕著な普遍的価値 世界遺産は、その定義上、顕著で普遍的な価値(OUV)を有することが必要である(条約1条、2条および作業指針45段落)。 推薦書の「登録の価値証明(Justification for Inscription)で記述が求められる琉球弧のOUVについては、平成19年度報告書において以下2つのクライテリアに適合すると整理されている。 ○クライテリアⅸ(生態系) 琉球諸島は大陸との分離・結合を繰り返した地史を反映した、大陸島における生物の侵入と隔離による種分化の過程を明白に表す顕著な見本である。 ○クライテリアⅹ(生物多様性) 琉球諸島はIUCNレッドリストに掲載されている多くの国際的希少種の生息・生育地となっている他、多くの固有種が見られ、世界的に見ても生物多様性保全上重要な地域となっている。 1)クライテリア(ⅸ)(生態系) 琉球弧は「大陸との分離・結合を繰り返した地史を反映した、大陸島における生物の侵入と隔離による種分化の過程を明白に表す顕著な見本である」と考えられる。 「琉球諸島」はかつて中国大陸と接していた典型的な大陸島である。このため、この地域の陸域の生物相は、主に「琉球諸島」が、大陸と陸続きだった時代に周辺地域から由来した生物群によって構成されていると考えられる。 「琉球諸島」の陸生生物は、隔離され島嶼で独自の進化がとげた多くの固有種や固有亜種を含む点で特異で、特に、古い年代に分化したために古い形質を残し、周辺に近縁種が確認されていない遺存固有種が多いのが特徴である。 一方で、台湾や中国大陸、九州などの周辺地域にも分布しているものも少なくない。また、固有種の中にも琉球諸島の比較的広い範囲に分布するものから、特定の島や地域にしか分布しないものまで、いろいろな遺存性を示す種が含まれている。このように、いろいろな分化程度を示す固有種や非固有種がみられるのは、一度隔離された列島が再び周辺の陸塊と接続し、新たな生物種の侵入を許したからである(戸田ら、2003)。 加えて、島嶼化していく過程で、面積と環境の多様性が小さくなり、生態系ピラミッドが支えきれず、絶滅した種も多いと考えられる。 このように、古い時代の大陸起源の生物相が、島嶼化し細分化する過程で絶滅・進化・種分化が起き、さらに異なる時代に新たな生物が侵入して、絶滅・進化・種分化が重なることで、現在の「琉球諸島」の生物相が成立したと考えられている。

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