平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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51 (9)海域の動植物 ①海水魚類 「琉球諸島」の周辺に生息する魚類は、インド太平洋に生息する熱帯魚類の北限として重要と考えられている。しかしながら、種数も多く、その全容解明には時間を要する(本村私信,2012)。 奄美大島の魚類については、昭和40年代前半に鹿児島県が奄美大島海中公園調査報告」「奄美群島自然公園候補地学術調査」を実施しているが、近年の調査例は乏しい。また、古くから日本各地の研究機関によって調べられているが、断片的な知見は蓄積されているものの、まだ全体を網羅した魚類相に関する論文は出版されていない。 現在、鹿児島大学総合研究所において、与論島の魚類相について調査が進められている。 ②底性動物 平成17年度報告書では、石垣島アンパルと西表島浦内川河口域を特筆すべき沿岸環境と位置付け、底生生物について述べている。 2002 年から2006 年にかけて、環境省生物多様性センターによって自然環境保全基礎調査浅海域生態系調査(干潟調査)が実施された。これは、浅海域に存在する干潟の生物多様性を把握することを目的に、全国の代表的な157カ所の干潟を対象に、統一された調査手法によって底生生物相の調査が行われた。 「琉球諸島」における調査地点は、奄美大島で2地点(笠利湾(手花部干潟・喜瀬干潟)・住用干潟(調査地名「住用川」))、沖縄島で10地点(北部西岸における塩屋湾(塩屋・大保川河口)と羽地内海の3 地点(饒平名、我部井、呉我)、中部東岸における大浦湾奥部の1 地点(調査地点名「大浦」)と金武湾の1 地点(億首川)、南部西岸における2地点(漫湖、具志・大嶺)、南部東岸における中城湾の2 地点(泡瀬、佐敷))、宮古島で1 地点(与那覇湾)、石垣島で4 地点(川平湾,崎枝湾、名蔵湾、宮良湾)、西表島で4 地点(船浦、浦内湾(調査地名「浦内川」)、星立、前良・後良川河口)の計21地点である。 以上の干潟おいては底生生物種のリストが作成され、一定程度底生生物相は把握されたが、例えば、奄美大島では調査地点はわずか2地点しかなく、島全体の底生生物相を述べるにはさらなる調査が必要な状況である。 奄美諸島周辺海域については、「平成21年度奄美地域の国立公園指定等に関する検討調査業務報告書(平成22年3月環境省自然環境局)」により棘皮動物、貝類、甲殻類のリストが作成されているが、図鑑を中心にまとめられたものであることから、今後、現地調査によって実際の分布を確認していく必要がある。

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