平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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50 ・リュウウキュウアユ 奄美大島と沖縄島に分布する。日本本土および朝鮮半島からベトナム国境付近までの中国沿岸部には基亜種のアユが生息している。 奄美大島では、中南部の住用湾および焼内湾に注ぐ河川を中心に生息する。沖縄島では急速な開発により消滅し1992年から、奄美大島産の種苗を移殖した。奄美大島では、河川改修・道路整備・土地造成による赤土流入が河川と内湾での生息域、餌場、産卵場を荒廃させ、激減しつつある。環境省版レッドリストでは絶滅危惧IA類(CR)となっている。 リュウウキュウアユは形態的にも生態的にも遺伝的にも本土のアユから独立した亜種であることが示されている。アイソザイム分析の結果によれば、本亜種の遺伝子はその5分の1以上がアユのものと異なっており、このことから本亜種はトカラ海峡を境として100万年レベルの期間にわたって「琉球諸島」で独自の歴史を歩んできたと考えられている(西田, 2001)。 本亜種は琉球列島の固有亜種であり、その存在は琉球列島の地史、古地理と強く結びついていると考えられる。また同地域河川のキーストーン種であり、河川環境域の保護対策を進める上でも重要な位置にある。

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