平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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49 (8)陸生魚類 平成17年度報告書によれば、「琉球諸島」には河川上流部から河口付近にかけて少なくとも23目89科494種の魚類が確認されている(環境省編, 2003; 幸地, 2003a,b; Tachihara et al., 2003; 鈴木・瀬能, 2005; 沖縄県編、2005など)。ただし、これらの種の約4割はサンゴ礁などに生息する海水魚で、河口付近の海域で記録されたものである。したがって、この海水魚を除いた20目58科の計272種が、本来の意味で「琉球諸島」の陸水域の魚類相を表していると考えられている。 「琉球諸島」の陸水域の魚類272種のうち、全生活史を淡水域で過ごすものは27種確認されているが、大正期以降に持ち込まれた外来種(立原ほか, 2002; 幸地, 2003)を除くと、メダカ、コイ、ギンブナ、ドジョウ、タイワンキンギョ、タウナギ、アオバラヨシノボリ、キバラヨシノボリの8種のみとわずかである。 生活史のある時期に規則的に川と海の間を回遊する「通し回遊魚」と本来は海水魚だが一時的に淡水域に侵入する「周縁性淡水魚」は計70種で、その約6割をハゼ亜目魚類が占めている。 汽水域で生活史の大半を過ごす「汽水魚」や海域から汽水域へと一時的に遡上してくる「海水魚」は36科175種(周縁性淡水魚を除いた種数)と多く、その約6割をハゼ亜目やボラ科魚類が占めている。 以上のような陸水魚類相が形成された理由として、「琉球諸島」の河川が短く急勾配のため増水時には川の全域が急流になり塩分耐性のない純淡水魚が生息しにくいことと、そのような水域環境でも底生性のハゼ類などは適応できたことが挙げられる。また、「琉球諸島」にはマングローブ域が発達した感潮域を有する河川とそれに続く海域のアマモ場やサンゴ礁が比較的良好な状態で残存しており、そのことが多くの通し回遊魚や周縁性淡水魚、汽水魚などの生息を保障している(立原, 2003)。 通し回遊魚と汽水魚は海を通じた分散が可能と考えられる。しかし、生活史に淡水の影響を必要とするため、ある程度の規模の河川が存在する島でなければ生息できないという制約がある。生息可能な島が少なければ、おのずと生息地間の距離が大きくなり、地理的に隔離されやすいと考えられている(向井,2010)。このため、リュウキュウアユ、オキナワトウゴロウ、ミナミクロダイ、アヤヨシノボリ、ヒラノヨシノボリ、アオバラヨシノボリ、キバラヨシノボリ、ミナミアシシロハゼ、イズミハゼ、ナガノゴリといった琉球列島固有の淡水魚が存在する(中坊,2000;Sakai et al.,2001)。なかでも代表的なのがリュウキュウアユである。

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