平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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41 (5)昆虫相 日本の昆虫は、1989年時点で28,937種記録されているがその後の増加で現在は34,000種を超えると推定される(環境省,2005)。 「琉球諸島」における昆虫相については、「琉球列島産昆虫目録」(東,2002)にまとめられているが、この後も多くの種について記録もしくは記載されている。また、昆虫類は、未だ分類学的な研究の進んでいないグループも多く、これらについての研究が進展するにしたがい、今後「琉球諸島」における昆虫類の種数はさらに増加すると予測できる。 「琉球諸島」における昆虫相の概略を把握するために、「琉球列島産昆虫目録」(東,2002)より目ごとの種数を算出した。種数は7,638を数える。固有率は31.1%で、小笠原諸島の27.5%を上回っている。 最も多くの種が確認されているのがコウチュウ目で2,590、次いでチョウ目で1,411となっているが、昆虫全体に占めるそれぞれの比率は日本全土と大きな差は無い。コウチュウ目については固有率が46.4%と高く、小笠原諸島の33%を上回っている。 環境省版レッドリストに記載されている種(亜種を含む)は121で、IUCN版レッドリストに記載されているのは68種である。 中琉球と南琉球を比較すると確認種数は中琉球が多く、両地域の固有種数も中琉球が多くなっており、固有種率も中琉球が約20%、南琉球が約17%と中琉球が高くなっている。 昆虫相を概観すれば、属レベルの固有性は低いが、種レベルの固有性は高い。島嶼の形成と大陸との陸橋化の繰り返しはこれらの昆虫に地理的隔離を生み、独自の生態系の成立をうながした。このようなことから遺伝的変異の蓄積がされ、ヤンバルテナガコガネや、クロイワゼミ、オキナワサラサヤンマなどの固有種への分化が起こっている。これらの分化は繰り返される地理変動により一様に種レベルで起こってはおらず、種以下のカテゴリーでの多様性や固有性も高く、様々な段階での分化が現在も進行中である。

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