平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
40/87

35 ナミヘビ科のアカマダラ、シュウダの計8種を除いた51種が日本固有種で、さらに47種が琉球諸島の固有種である。固有種率は約80%である。 「琉球諸島」在来爬虫類74種のうち、環境省版レッドリストには47種1地域個体群が記載されている(人為的分布の可能性の高いスッポンを除く)。日本全土で環境省版レッドリストに記載されている爬虫類は56種3地域個体群であり、その約83%が「琉球諸島」に分布する。IUCN版レッドリストには31種が記載されている。 「琉球諸島」は、ユーラシア大陸や南方のフィリピンなどと分離、結合を繰り返すといった複雑な地史を持った大陸島であることから、爬虫類相は最初の島嶼化の生き残りである遺存固有種と新たに分布を広げた種が混ざりあった二重構造を持つと思われる。 「琉球諸島」のうち、中琉球(奄美諸島・沖縄諸島)に起源の古い種、いわゆる遺存固有種が多く残っている。すなわち、リュウキュウヤマガメやクロイワトカゲモドキ、ヘリグロヒメトカゲ、キクザトサワヘビといった種は、近縁種が八重山・宮古列島や台湾に生息しておらず、すべて遠く離れた中国大陸に見られる種である。また、同じく奄美諸島・沖縄諸島にのみ生息するバーバートカゲも、トカゲ属内の系統解析の結果から、古い固有種であることが明らかとなっている。 南琉球(宮古列島・八重山列島)に生息する爬虫類は、そのほとんどで近縁種が台湾に分布する。例えば、ヤエヤマセマルハコガメ(=タイワンセマルハコガメ)、サキシマスジオ(=タイワンスジオ)、サキシマスベトカゲ(=タイワンスベトカゲ)などである。これの存在は、台湾と八重山・宮古列島間に陸橋があったときに動物相の移動があったことを示している。その後の島嶼化によって種分化が起こり、少なくとも亜種として区別されるほどの違いが認められるようになった。 中琉球と南琉球に共通して分布している「琉球諸島」固有種はない。また、薩南諸島以南に分布しているヘリグロヒメトカゲは南琉球には分布しない。両地域に分布している種は広域分布種であるヤモリ科の3種のみである。このように慶良間海峡が爬虫類の分布にとって重要な境界線になっていることがうかがえる。 表3-13 中琉球と南琉球の爬虫類の確認種数(亜種を含む)の比較 種数中琉球/南琉球の固有種数「琉球諸島」固有種数環境省 RL(2006)IUCN RL(2011)中琉球2924252012南琉球262222198※陸生の在来種で算出

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る