平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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31 ⑤コウモリ類 「琉球諸島」は翼手目の生息種数が多いのも特徴である。コウモリ識別ハンドブック(改訂版)(コウモリの会,2011)によれば、日本全土に生息する37種のうち14種が生息し、その割合は37.8%に達している。このうち6種が「琉球諸島」固有種と考えられており、固有種率は42.8%である。 環境省版レッドリストでは、クビワオオコウモリの亜種であるエラブオオコウモリとダイトウオオコウモリ、奄美諸島に生息するコキクガシラコウモリをオリイコキクガシラコウモリとして、宮古島に生息するオキナワコキクガシラコウモリをミヤココキクガシラコウモリとして、西表島に生息するヤエヤマコキクガシラコウモリをイリオモテコキクガシラコウモリとして記載しており、「琉球諸島」では14種が記載されている。環境省版レッドリストには翼手目は33種2地域個体群が記載されているので、約40%が「琉球諸島」に生息していることになる。 IUCNレッドリストには11種が記載されており、生息する種の約80%が国際的な希少種ということになる。 中琉球の固有種となっているのがリュウキュウテングコウモリとヤンバルホオヒゲコウモリで、奄美大島、徳之島、沖縄島で確認されている。両種とも森林性のコウモリで、保全するためには樹齢の高い森林環境の保全が求められる。 コウモリの分類については、これまでエコーロケーション能力を持たないオオコウモリ亜目と、エコーロケーション能力を持つコウモリ亜目の2系統で考えられてきたが、近年のDNAを使った分子系統学的研究から、オオコウモリは一部のコウモリと近縁で、これまでコウモリ亜目とされてきた種が単系統群を構成しないことが明らかになった。すなわち、エコーロケーション能力を持たないオオコウモリは、進化の過程でエコーロケーション能力を失ったと考えられている(コウモリの会,2011)。これにより亜目レベルでの名称の見直しが提唱されている。 近年は、コウモリ類の新たな分布確認は相次いでおり、琉球弧の全島嶼を対象とした調査が必要である。

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