平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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28 現生在来種の目毎の内訳では、食虫目が4種、翼手目が13種、食肉目が1種、偶蹄目が1種、齧歯目が7種、兎目が1種となっている。日本全土には現生在来種として、食虫目19種、翼手目35種、霊長目1種、食肉目(陸生)14種、偶蹄目3種、齧歯目20種、兎目4種、合計106種が確認されており、「琉球諸島」にはこのうちの27種、約25%が生息している。 「琉球諸島」を構成する島々は、最大の沖縄島でも面積が1,183k㎡であるように、島の面積が狭いため、食物連鎖のピラミッドが小さくなり、食肉目、偶蹄目、兎目は1種のみ、霊長目は生息していない。 このように、上位捕食者や大型種が少なく、翼手目や齧歯目などの小型種の生息種数が多いことが、「琉球諸島」の哺乳類相の特徴をなしている。食肉目で唯一生息しているイリオモテヤマネコは、その餌となるネズミ等の小型哺乳類が在来分布しないため、食性の幅が他のネコ科の種と比較すると著しく広がっているなどの特徴を持っている。 「琉球諸島」の陸生哺乳類のうち亜種とされているイリオモテヤマネコとリュウキュウイノシシを含めて16種がこの地域にしか生息していない固有種であり、「琉球諸島」の固有種率は約59%に達しており、極めて高い。 中でも、アマミノクロウサギ、トゲネズミ3種、ケナガネズミは固有属で、琉球諸島の典型的な遺存固有種と考えられている。 推薦書には琉球弧を特徴づける種について詳しく記載することになるが、アマミノクロウサギ、トゲネズミ、ケナガネズミ、イリオモテヤマネコ、コウモリ類がその候補となろう。 ①アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi) アマミノクロウサギは、奄美大島及び徳之島にのみ生息する1属1種の我が国固有の種である。本種は、主に原生的な森林内の斜面に巣穴を作り、これに隣接した草本類等の餌が多い沢や二次林等を採食場所として利用している。 アマミノクロウサギはウサギ類の他の種とかなり異なり、遺伝的情報からみても、分岐年代は1600万年~1200万年前と推定されている(Yamada et al., 2002; Matthee et al., 2004)。ムカシウサギ亜科に含まれる現生種は中米の高地帯に生息するメキシコウサギ属の1種と、南アフリカのアカウサギ属3種、そしてアマミノクロウサギ属のアマミノクロウサギ1種の、合計5種のみとされており、それ以外は化石属である。 古生物学的にみると、本種の祖先は化石種プリオペンタラーグスPriopentalagusと考えられており、化石は東欧で発見されていたが、近年中国大陸の揚子江流域で発見された(Tomida and Jin, 2002)。 さらに、沖縄本島おいて前期更新世(約170万年前から約130万年前)の地層

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