24 (2)植生 琉球弧の森林は、モンスーンのもたらす降雨により、世界の亜熱帯域の中でも限られた地域にしか成立しない亜熱帯性多雨林である。世界の他地域の亜熱帯は、中緯度乾燥帯にほぼ相当するため、森林がほとんど成立していません。亜熱帯地域で森林が成立する湿潤な条件を持つところは亜熱帯地域の1/3 に過ぎず、「琉球諸島」の森林は世界的にも希少なものといえる。一方、台風の常襲地帯であることを反映して、尾根部は強風による撹乱を受けている。 また、海洋に囲まれた小島嶼であることを反映し、沖縄島や奄美大島、徳之島等の最高峰の山頂部には、熱帯では概ね1000m以上の高標高地域で発達する雲霧林的な特徴を有する森林が、標高500m~700m以下で成立している。また、集水域が比較的狭い島嶼であるにもかかわらず、頻繁に降る雨によって、川岸には周期的に冠水する渓流帯が存在し、その水位の高低差は熱帯の規模にも近いとされる。琉球弧では、渓流帯に特異的に分布・分化した固有で希少な植物が多数知られている。 ①奄美諸島 奄美諸島における植生調査に関する報告は、「名瀬市植生調査報告書」(名瀬市,1974)と「奄美群島植生調査報告書」(株式会社プレック研究所,1975)があるが近年の広範囲の調査事例無ない。自然環境保全基礎調査で継続して植生図は作成されており、群落のタイプは分かっているが現在の群落組成の把握は十分ではない。 ここでは、第6回・第7回の自然環境保全基礎調査の植生図と「奄美群島植生調査報告書」にもとづき、奄美諸島の植生の概略を述べる。 高島で山地の多い奄美大島は、常緑広葉樹の森、いわゆる「照葉樹林」が60%を占め、20%近くあるリュウキュウマツ群落を加えると、島の8割以上が森林である。しかしながら、リュウキュウマツ群落やシイカシ萌芽林など、用材やパルプ用に伐採された後に成立する2次林が9割を占め、自然林はほとんど残されていないのが現状である。 徳之島は、高島に属しながら山地を取り巻くように隆起サンゴ礁の台地があり、耕作地が発達している。照葉樹林が約30%で、リュウキュウマツ群落の16%を加えると45%が森林で、耕作地の45%とほぼ同割合となっている。また、奄美大島と同様、森林の9割は二次林で、自然林はほとんど残されていない。 低島である喜界島、沖永良部島、与論島は耕作地が発達し、5割を超え、常緑広葉樹林はわずかである。これは、地形が平坦で耕作地として利用しやすかったためと考えられる。
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