平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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22 エ.奄美諸島の維管束植物の種数 本調査では、鹿児島県域の島嶼部において、「平成20年度奄美地域における国立公園特別地域内指定動植物検討調査業務報告書」(環境省,2009)等の既存資料を基に種の分布リストの作成を試みた(宮本,2012:参考資料1)。 本リスト作成の目的は、以下のとおりである。 ・ 奄美群島の植物分類群数の最少推定分布数と最大推定分布数を算出する。 ・ 奄美群島に分布する植物が周辺のどこに分布しているかの一覧表を作る。 ・ 奄美群島「北限」「南限」「固有」分類群の最少と最大の推定数を算出する。 ・ 奄美群島の植物相の把握における問題点を洗い出す。 本リストは複数研究者の共同編集による全国版植物図鑑等の分類群名を第一に用いて作成している。今後の分類体系の見直しや学名の変更がよって、改訂作業が必要となる。集計の考え方等詳細は参考資料を参照されたい。 奄美諸島に分布するとされる分類群数(最大推定数)は、シダ植物220種類、裸子植物5種類、被子植物双子葉類707種類、被子植物単子葉類402種類の計1334種類である。日本分類学会連合(2003)第1回日本産生物種数調査によれば、日本列島の単子葉類と双子葉類は5016種とされており、種や亜種などの分類段階に関わらず種類数の上からは,奄美諸島には約22%が分布することになる。奄美諸島の面積は日本列島の面積のわずか0.3%であるので、植物の分類群の多様性は非常に高いと言える。 また、北限種が239種類、南限種が97種類、固有種が68種類である。北限分類群が南限分類群より多いのは、奄美諸島が生物地理区の移行帯である「琉球諸島」の北端に位置していることを反映している。 環境省版レッドリスト記載種は246種に及ぶ。環境省版レッドリストには維管束植物が全国で1,690種が記載されており、奄美諸島にはその約15%が分布する。 IUCN版レッドリスト記載種が70種、鹿児島県版レッドリストには720種が記載されている。 表3-3 奄美諸島の維管束植物の種数(宮本,2012より作成) 種数北限種数南限種数固有種数IUCNRL(2011)環境省RL(2007)鹿児島県RLシダ植物2112813642929裸子植物5000404被子植物.双子葉類669158544622111447被子植物.単子葉類36653301642106240合計1251239976870246720「1:標本に基づく分布分類群」と「0:文献情報から分布可能性が高い分類群」の合計数(雑種,和名または学名が定かでない分類群を含まない)

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