平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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20 ① ミズワラビは「琉球諸島」の間で形態的に極めて多型であり、これについて酵素多型を解析した結果、沖縄島内部を境にして北方型と南方型に遺伝的な分化が生じていた(Masuyama, 1992)。さらに、この北方型と南方型には生殖的隔離も生じていた(Masuyama & Watano, 1994)。 ② モチノキ属(Ilex)の奄美大島の固有種であるアマミヒイラギモチと、石垣島・西表島固有のナガバイヌツゲの間で浸透交雑が起きており、この結果は両種がかつては雑種形成と戻し交雑ができる距離に分布していたこと、すなわち奄美大島と八重山列島がかつては陸橋で繋がっていたことに因ると考察した(Setoguchi & Watanabe, 2000)。 ③ 「琉球諸島」のテッポウユリの酵素多型を解析して、島が一定の標高より低い喜界島、沖永良部島、与論島、宮古島、与那国島の遺伝的多様性が他の島嶼に比べ低いことを明らかにして、その原因を更新世後期における海進で200m以上もの海面上昇が起こったために集団が一旦、消滅あるいは縮小したことに求めた。また、屋久島と奄美大島、奄美大島および徳之島と沖縄島の間に遺伝的に大きなギャップを認めている(Hiramatsu et al., 2001)。 ④ 日華植物区要素とされるアオキ属遺伝的な解析の結果、中国の雲南省、四川省に分布する種が最も原始的な位置にあり、ここを起点に西(ヒマラヤ)、南(雲南南部からベトナム)、東(台湾、南西諸島、日本列島)分布域が拡大したことが示唆された。染色体数に関する知見もあわせて解釈すると、日本列島のアオキは台湾や南西諸島に分布する同属種の系統の一部から派生したと考えられる。 ⑤ 広域分布種であるハマボッスで種内の葉緑体DNA多型を調べた研究では、検出された異なるハプロタイプの分布は、南琉球、中琉球、北琉球+九州+本州に分かれ、タイプ間の分化は南西諸島を北上する順で生じたことが示唆された(瀬戸口,2002)。 ⑥ オオジシバリとハマニガナの雑種と推定されていた「琉球諸島」の固有種であるミヤコジシバリが、両種の3倍体から8倍体までの雑種によって成立していることを示し、網状進化の具体例を示した(Denda & Yokota, 2004)。 ⑦ オーストラリアと琉球諸島にしか分布しないコケタンポポ属について、遺伝的に解析したところ、オーストラリアのものから琉球諸島のものが発生し、北上しながら遺伝的に分化していっていることが示唆された(Nakamura et al.,2012)。

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