平成23年度「琉球弧の世界自然遺産登録に向けた科学的知見に基づく管理体制の構築に向けた検討業務」報告
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15 ②完全性 完全性については、作業指針の88条に述べられている。 さらに、自然遺産については作業指針の90条に詳しく述べられている。 自然遺産は原則的には生物物理学的な過程及び地形上の特徴が比較的無傷であることが求められる。 奄美大島、徳之島、やんばるの森林は、第3章でも述べるが、古くより利用がなされている。特に、奄美大島と徳之島の森林はほとんどが二次林である。当該地域においては、モンスーン気候を背景とした照葉樹の旺盛な再生産力をうまく利用しつつ、受け継がれてきたタブーや戒めなどにより持続的な資源利用を行い、結果として希少種や固有種の生息空間としても維持されてきたと考えられている。 推薦書では、このような伝統的な慣習や自然観について説明するとともに、今後の森林利用についても、持続可能な森林利用方策を科学的に説明することで、「生態学的に持続可能なもので、当該地域の顕著な普遍的価値と両立し得る。」と認めさせることが必要になる。遺産地域の周辺地域についても説明を求められる可能性が高く、バッファーゾーンの設定が必要であろう。 この点が、これまでの我が国の世界遺産と異なり、琉球弧の推薦書の作成の大きな課題である。 90. 登録価値基準(vii)から(x)までに基づいて登録推薦される資産は、全て、生物物理学的な過程及び地形上の特徴が比較的無傷であること。しかしながら、いかなる場所も完全な原生地域ではなく、自然地域は全て動的なものであり、ある程度人間との関わりが介在することが知られている。伝統的社会や地域のコミュニティーを含めて、人間活動はしばしば自然地域内で行われる。そのような活動も、生態学的に持続可能なものであれば、当該地域の顕著な普遍的価値と両立し得る。 88.完全性は、自然遺産及び/又は文化遺産とそれらの特質のすべてが無傷で包含されている度合いを測るためのものさしである。従って、完全性の条件を調べるためには、当該資産が以下の条件をどの程度満たしているかを評価する必要がある。 a) 顕著な普遍的価値が発揮されるのに必要な要素がすべて含まれているか。 b) 当該資産の重要性を示す特徴を不足なく代表するために適切な大きさが確保されているか。 c) 開発及び/又は管理放棄による負の影響を受けているか。 以上について、完全性の宣言において説明を行うこと。

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