平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
97/104

89 2.植生 徳之島の自然林は,基本的にはヤブツバキクラス域に相当する。植物社会学的には,そのうちのスダジイ-リュウキュウアオキオーダーに含まれ,屋久島かから東北地方まで分布するスダジイ-ヤブコウジオーダーと対比される。亜熱帯林では地形や母岩のよって優占種や構成種が異なる。石灰岩地ではイスノキヤクスノハカエデ林がみられ,非石灰岩地の沿岸部にスダジイ林,内陸部にオキナワウラジロガシ林が成立する傾向がある。アカネ科やヘゴ科など台湾や中国東北部との共通する分類群を含み,オキナワウラジロガシの板根やシマオオタニワタリなどの着生植物の存在は熱帯的相観を示す(佐藤 2009)。 1970年代の記録において,二次林,二次草原,植林など代償植生が多い点が指摘されていた。例えば,山腹のギョクシンカ-スダジイ林,コシダ-スダジイ林,あるいはスダジイとアマミアラカシの萌芽林,リュウキュウマツ植林が挙げられていた。屋敷林はほとんど無かった。水田が減尐し始めた時期であったが,水田の植生としてマルミノスブタ-コナギ群集やコウキヤガラ群集が記録されていた。自然林としては,リュウキュウアオキ-スダジイ群集,アマミテンナンショウ-スダジイ群集,オキナワウラジロガシ群落,タブ群落が挙げられていた。オキナワウラジロガシ群集やケハダルリミノキ-スダジイ群集は,三京,涼,犬田布岳,喜念,天城岳に残存しており,井之川岳山頂部は奄美大島の湯湾岳山頂部とともに風衝林とみなされた。低地では,島の南部,伊仙町御前审,喜念付近にグミモドキ-クスノハカエデ群落,手々からムシロ瀬にかけてはアカテツ-ハマビワ群集の風衝低木林,海岸部では,ハマササゲ-グンバイヒルガオ群集,ハマニガナ-コオニシバ群落,ハマボウフウ-ツキイゲ群集が記録されていた(プレック研究所1975)。 徳之島の中央部は北から南へ天城岳(533m),三方通岳,大城岳,美名田山,井之川岳(644m),丹発山,剥岳,犬田布岳が連なっている。1980年代の情報に基づく現存植生図(宮脇・奥田)では,山頂部を結ぶ尾根上を,自然植生としてケハダルリミノキ-スダジイ群集とアマミテンナンショウ-スダジイ群集が被い,井之川岳西側の谷と剥岳山頂北西部にオキナワウラジロガシ群集,ヤマビワソウ-ホソバタブ群集がある。ただし,天城岳と三方通岳からなる北部の自然植生区域と,美名田山から犬田布岳までの逆「くの字」型の自然植生区域とは,亀徳港と平土野港を結ぶ道路周辺の耕作地雑草群落によって分断されている。自然植生域の周囲を代償植生であるサキシマツツジ-リュウキュウマツ群集が取り巻き,ギョクシンカ-スダジイ群集が点在している(宮脇 1990)。 1996年に鹿児島県立博物館から刉行された『奄美の自然』に比較的最近の植生の特徴がまとめられている。それによると,徳之島においては,中央山地の粘板岩を为とする中生層上の植生と低平地の隆起珊瑚礁石灰岩地上の植生に大別され

元のページ  ../index.html#97

このブックを見る