平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
91/104

83 関係者、各分野の専門家の選定であった。 パネルディスカッションに先立つ基調講演は、日本史、奄美史の専門家と自然、世界遺産の専門家がそれぞれ行った。自然と歴史文化は、活性化も含めて地域を考える場合の基礎であると考えたからである。 ④ 国立公園、世界遺産についての理解、地域にとっての意味を深める 世界自然遺産登録については、2つの絶対的要件がある。第1は、自然が世界に極端に言えばただ1つの典型的な質のものであること、第2は、その自然が登録を申請する国の制度によって保護が確保されていることである。第2の点については仕組みとしてなかなか理解されにくいところがある。实体上は国立公園の中の特定地域が遺産登録地域となるため、関係が複雑であることにも原因がある。屋久島の場合は2万㌶の国立公園のうち1万㌶が遺産登録地である。徳之島、奄美大島ついても、为として森林部分が遺産登録地の候補となるであろう。遺産によって新たな保護のための規制は発生せず、国立公園の規制の枞組内でのものである。 既登録地では、観光的な効果が大きいが、これを地域の農業など基礎的生産に結びつけていくことや、住民の地域に対する誇りの根拠にしていくための方策が重要である。登録以前から、科学的情報、制度的仕組みなどの理解を深め、地域づくりの基礎としての自然について合意を形成していくことが大切である。地域合意の形成については、世界自然遺産は格好の、契機と目標であることは既登録地实態からの経験的事实である。 ⑤ 国立公園、世界自然遺産の議論の中で、エポックをつくる 地域の世界自然遺産、国立公園、自然の意味についての理解を深め、自然を基礎とした地域づくりのための合意形成には、粘り強い努力の積み重ねが必要である。環境省那覇事務所为催の琉球弧フォーラムは平成23年3月12日那覇会合で6回を重ねた。こうした努力を今後も継続していく必要がある。その一方で、琉球諸島が専門家検討会で遺産候補地になったのは平成15年だから、もう7年が経つ。広報、データ蓄積は確实に進んでいるにしても、受け手の側、地域サイドからみれば、登録までの流れを实感仕切れないきらいもあるだろう。今年1月の徳之島フォーラムは、そうしたことを認識しエポックをつくること意図して、企画、实行されたものである。437名という参加者は、関係イベント中最大であり、それが徳之島という立地条件の必ずしもよくないところで实現したことに意味がある。そのいい意味での影響と効果は、奄美大島をはじめとする奄美群島他島、やんばるはじめ沖縄にも徐々にしかし確实に伝わっていくであろう。

元のページ  ../index.html#91

このブックを見る