平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
87/104

79 2) 地域全体のグランドデザイン 国立公園を地域の中で見た場合、公園区域外と切り離された存在であるわけではない。自然保護のための規制区域である国立公園が、地域の日常性と合理的な関係を深めることができれば保護目的もより達成し易いという関係にある。 ここではそのための視点として、「土地利用ゾーニング」、「観光」、「振興事業との連携」を挙げる。 ① 土地利用ゾーニング 国立公園地域だけではなく、島全体の土地利用の方針をゾーニングという明示された形で示す。これは地域全体の中での保護地域の位置付けを明確にすることでもあり、徳之島モデル計画で既に述べたように、開発と保護の調整という観点からも重要である。あらかじめ議論し調整しておくことによって、いたずらな混乱は回避されるし、上手くいけば、公園区域周辺地域が、保護のための緩衝地域の機能を持つことも可能となる。 もっとも重要なことは、地域の保護と開発、地域づくりの間の調整が、図示されたプランを基に地域全体で合意された方針となることである。 ② 総合産業としての観光 観光は本来、付加価値型、人手を中心としたサービス産業であり、総合型の産業である。しかしながらこれまでの観光業の形態は、必ずしもそうではなく、団体利用、マス利用を中心とした表層的、一部業界に特化しがちな産業形態であったことは否めない事实であった。 奄美、やんばる地域は、これまで観光的には注目されて来なかった経緯があり、その意味では新しい観光地形成が可能となる地域でもある。これまでの発想を転換して、新たな観光のスタイル、いわば総合観光産業をつくること、「国の光を観る」観光を深化し、「地域の新しい光を観る」観光を確立するとの視点が必要である。 大、中規模宿泊施設や大型レストランではなく、小規模手づくり型の宿泊、食堂、土産物屋のスタイル、地場生産品を提供する食事を志向すべきであり、手がかりとして特産品開発、土産物開発にいまから着手すべきであろう。 屋久島において世界自然遺産登録後エコツアーガイドが200人になったことをみれば、そうした新産業、新職種の開発も考慮に値する。 国立公園、世界自然遺産登録によって全国的な注目を浴びることは、その点において絶好のチャンスである。 ③ 各振興事業との連携等踏まえるべき視点 国立公園指定によって、国立公園利用施設の整備は可能になるが、加えて道路

元のページ  ../index.html#87

このブックを見る