平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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77 ④ ガイドツアー・エコツアーの準備検討 奄美群島とやんばる地域の自然は、一般利用者が単に見るだけで満足するような類のものは尐なく、世界自然遺産の価値となる生物の多くは通常は見ることが困難である。適切なガイドに従って対象を理解し、観察し、体験することによって大きな満足が得られるものである。さらに、両地域とも地域住民の生活と関わりが深いことから、地域の歴史や文化とあわせて解説することにより、その魅力は増す。白神山地や知床で見られるように、世界自然遺産というキーワードは知的好奇心を高め、ガイドツアー、エコツアーに対する需要を高める。奄美群島とやんばる地域においてもガイドツアー・エコツアーの今後の発展が期待される。一方で、自然環境の負荷軽減し、持続的に利用するためには、利用人数の調整や利用ルートの一時的な閉鎖などのルール作りが必要なことは既に述べた。 これに加え、ガイドの認定制度や自然環境の保全への還元について事前に議論をしておく必要がある。白神山地の例でいえば、藤里町がかなり質の高いガイド養成登録制度を設け、さらに売り上げを自然環境の保全に還元する仕組みを設けている。 また、ガイドは専業か兼業かの想定も必要である。白神山地の場合は一部を除いて兼業やリタイヤされた者である。知床においても、ガイドについては、需要の繁忙期と閑散期があり、年間を通じての仕事と十分な給与を得られにくいことも踏まえておく必要がある。受け容れ規模は今後各地域で議論していくべき内容であるが、持続的な利用と地域産業との連携を考えれば、その地域の産業に携わっている者が兼業でまずは担っていくことが望ましいと考える。 なお、生活文化も含めてツアーを構成する場合には、地域をある意味で商品化することについて、関係者間で十分合意しておく必要がある。

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